ロッド・スチュワート フェイセズ再結成、70歳で見つけた幸福

ようやくリムジンが到着し、スチュワートをシーザーズ・パレスへと大急ぎで運んだ。ヴェガス在住のスターたち(マライヤ・キャリーやブリトニー・スピアーズなどの)とは違い、スチュワートはショーごとにセット・リストを変えるのが好きだ。今夜は91年のヒット曲「ザ・モータウン・ソング」を持ってきた。腰掛けに座り、バンドが演奏するのをまっすぐに見つめ、ほぼすべてのメンバーに細かく指示を出した。いつもならショーが始まるまでの間、自分の楽屋(同じ劇場を使う旧友のエルトン・ジョンのために天井にいたずら書きをよく残す)に戻るスチュワートだが、今日はブラジリアンTVの取材班が、近く行われるロック・イン・リオでのパフォーマンスについてのインタヴューをしに街へ来ている。彼はこのフェスティバルの開催30周年を祝って、8万5000人のファンの前で歴史的パフォーマンスを行うことになっている。

プロデューサーは、その女性インタヴュアーが最近ではキース・リチャーズにもインタヴューしたこともあるプロだと請け合ったが、すぐに彼女の英語力に問題があることが発覚する。スチュワートがロック・イン・リオでは「ズボンははかない」と何度も宣言したのを理解できなかったようだったし、次の10分は下手な質問とふざけた答えの応酬で散々なものになった。スチュワートが卒倒して死んだふりをする場面もあった。

スチュワートの周囲の誰もが気をもんでいるように見えたが、彼は数秒後に起き上がると、「ステイ・ウィズ・ミー」の演奏中に客席に向かってキックする予定のたくさんのサッカー・ボールに楽しそうにサインをし始めた。彼は何年もこれを続けてきて、ボールが頭にあたったとファンから何度も訴えられているにもかかわらず、辞めるのを拒んでいる。

「Some Guys Have All the Luck(運の良い男もいるものだ)」とくっきりと書かれた巨大な赤いカーテンが7時半きっかりに上がった時、シーザーズ・パレスのコロッセウムに空席はなかった。ロッドはステージに駆け上がり、ヒット曲メドレーを84年の「おまえにヒート・アップ(インファチュエーション)」で始めた。1時間45分に彼の全てのヒット曲を詰め込むことは不可能だが、「胸につのる想い」、「さびしき丘」、「ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー」、「フォーエヴァー・ヤング」、「ガソリン・アレイ」をなんとか盛り込んだ。観客は一語一語漏らさずに一緒に歌った。

Translation by Kise Imai

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