ーピンク・フロイドもヘンドリックスと一緒にツアーをしていますよね。
そう、それもドキュメンタリーに入っていなかったなあ。あれは1967年の11月3日あたりに始まって、12月19日まで続いた。6週間、全英を回って、映画館やら小さな商工会館的なところで演奏をしたものだよ。みんなで舞台の袖からトリのヘンドリックスの演奏を見ていたことを覚えている。どうせほかに行く場所なんてなかったからね。彼は35分くらいしか演奏しないんだ。「紫のけむり」「ヘイ・ジョー」「恋はワイルド・シング」なんかがセットリストに入っていた。
Pink Floyd (1967)ージミ・ヘンドリックスはどんな人でしたか。
かわいらしい人だよ。個人的に親しくしていたわけではないけれどね。ある時点で彼は、私がSFに詳しいことを知ってね。私はたくさん読書をするんだけど、彼はその頃はまだシオドア・スタージョンやロバート・ハインライン、カート・ヴォネガット、アイザック・アシモフなんかに出会ったばかりだった。彼にはちょっと子供っぽいところもあったかな。イノセントでね。優しくていい男だったよ。才能はいうまでもない。
ー何だか、楽しそうなツアーだったんですね。
そうだ。楽しかった。そのツアーの時、私たちはほかの人たちと一緒のバス移動が嫌で、車を使っていたんだけど、途中、愛車フォード・ゼファー4を非常駐車帯に止めて、エンジンを切り、ラジオをつけて『サージェント・ペパーズ』を聴いたりしていた。あのアルバムが発売されたころには、ラジオ1がアルバムを丸ごと放送していてね。座ってじっと聴いていたことは忘れられないよ。「ああ、もう勘弁してくれ。何てすごいアルバムなんだ」って思ったよ。実はビートルズと同じスタジオで自分たちのデビュー・アルバムをレコーディングしていたから、曲はもうさんざん聴いていたんだけどね。いやはや、あれは革命的なアルバムだった。