ボウイのベーシストが語る20年:「彼が私の人生を変えた」

ーつい最近、マイク・ガーソンと話したんです。ツアーがちょっと長すぎて、最後にはみんな疲れ果てていたって言ってました。

音楽とかそういうこと対しては、全く退屈しなかったけど、確かに疲れてた。ある時点ではみんな、家に帰る準備ができていたと思う。

ーチェコでの最後から2番目のコンサートを覚えていますか?数曲の間、デヴィッド・ボウイがステージを離れたコンサート。

もちろん、たぶん一番記憶に残ってるやつよ。ステージで具合が悪かった彼を覚えてるの。会場はとてもとっても暑くて。大きなクラブみたいな場所で。天井は低くて、長い長方形の部屋で、幅はあまり広くなくて、後ろまで人がびっちり。狭苦しい気がしたのを覚えてる。満員だったし照明とかそんなので、とっても暑くて。「嘘でしょ。今夜は大変そう。酸素がなくて、息苦しいわ。」って感じだったと思うわ。

何曲予定してたか覚えてないけど、確か『リアリティ』をプレイしてたの。彼、曲の終わりに歌うようになってたのに、歌わなくて。私は後ろから見てたんだけど。とっても暑かったから、みんな汗まみれ。でも彼のシャツは、びしょ濡れ。びしょびしょで、マイクを左手で握っていたの。立って歌う姿勢をしてるのに、歌わないのよ。「どうして最後の部分を歌わないの?」って思ったの。

それから彼が肩越しに私を見たんだけど、白いというか青白くて、透明になりそうな感じで。目を大きく開いて、少し息を切らして、呼吸をするが苦しそうな感じ。私は観客を見下ろしたのを覚えてる。最前列の人たちが、デヴィッド・ボウイを見上げる表情が変わったことに気付いたの。楽しんでる様子から、心配する様子になって。この時、ボディーガードでヘルパーの男性も同じ状況を目にしてて、ステージに上がってきて彼を連れて行ったわ。

私たちはプレイし続けた。誰かが『Be My Wife』をするように叫んだから、キャット (キャサリン・ラッセル)がリードボーカルをして。それから『ロウ』のインストルメンタルな曲(『ア・ニュー・キャリア・イン・ア・ニュー・タウン』)。その後で、私たちは「どどうするべき?彼はどこ?何が起きたの?」って感じで、ただその場に立ってたの。そしたら私たちも、ステージからカフェテリアみたいな待機エリアに連れていかれて。衣装部屋ではなかったわ、だってそこは彼がいて入れないようになってたから。

私の記憶だと、たぶんその場所に30分くらい座ってた。スタッフは「戻ってくるから」って感じで。私たちは彼の呼吸に問題があったこと以外、何が起きたか分からなかったの。ステージに戻って何曲かプレイして、スツールをお願いして座ってた。コンサートをキャンセルするのを嫌う人でね。体調が悪くて、ステージ脇に曲の間に吐く用のバケツを用意してたコンサートも何回かあったのよ。とにかく、キャンセルしたくない人。その4、5日後まで、彼が心筋梗塞をおこしていたなんて、私たちは知らなかったんだから。

Translation by Miori Aien

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE