2016年アカデミー賞、12の意外な脱落作品

10.『マーロン・ブランドの肉声』ドキュメンタリー賞
ハリウッドの最も輝かしいスターのひとりであるマーロン・ブランドの注目すべきドキュメンタリー。スティーブン・ライリーが監督するマーロン・ブランドのポートレートは、彼の映画からの映像、そして彼の知られざる闇をブランド自身が録音したテープから抜粋したもので構成されており、いくつもの顔を持つ欠点だらけの男、マーロン・ブランドを強く印象付けている。この映画は、サンダンス映画祭の初公開後、ケーブルテレビでほとんど公開されたが、短すぎる劇場での公開が受賞のチャンスを損なったのではないだろうか。もしくはブランドの8回のオスカーノミネート歴が、今回も当然というメッセージになると考えたのかもしれない。

11.クエンティン・タランティーノ、オリジナル脚本賞『ヘイトフルエイト』
タランティーノのアカデミー賞における確実な実績にも関わらず、『ヘイトフルエイト』は、『オデッセイ』が 「スターに注目した」ポプティミズムの包含的な強みで最優秀作品賞にノミネートされるような今回のオスカーでは、あまりにも両極端で、シニカルだ。それでも彼の、人種問題を引き起こしそうなフロンティア・ジャスティスの欠陥を描いた密室ミステリーは、非常に色濃いストーリーで、観ているとまるでページをめくる音が聞こえてきそうだ。しかし「Nワード」が多すぎたのかもしれない。もしくはタランティーノのこの種の映画は『ジャンゴ』のほうが良かったと投票者は感じたのだろうか。

12.マイケル・B・ジョーダン、主演男優賞『クリード』
マイケル・B・ジョーダンが『ファンタスティック・フォー』に出演していたのを覚えているだろうか?もちろん覚えていないだろう。なぜならその数ヶ月後に彼が主役を演じた『クリード』がぶっちぎりに好評だったため、どうでもよくなってしまったのだ。ロッキー・バルボアの最高のライバルの、攻撃的だが傷ついた息子という彼の役は、実に恰好よく、そして複雑で、皮肉にも古い映画を利用して稼ごうという企みなど、考えられなくさせられる。その後、ワンテイクの驚くべき対戦シーンでは、セルフパロディに陥っていたこのシリーズの敏感な魂に再点火することへの責任感がはっきりとわかる。もちろん、ジョーダンが本当にノミネートされたかったのであれば、白人として生まれてくるべきだったのではないだろうか。これは単にオスカーのお粗末な戦略なのだ。

Translation by Kayoko Uchiyama

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