『いつわりの瞳』 (1975)


ロサンゼルスの拝金カルチャーを滑らかに風刺している『いつわりの瞳』は、ヘンリーとフライがある夜、お気に入りのバー、「ダン・タナズ(Dan Tana’s)」で経験した出来事にインスパイアされている。若くて美しい女が、太った金持ちの老人と一緒にいるところを目撃したフライは「彼女はあのいつわりの瞳を隠すことすらできない」とすぐに見切ったのだった。この辛辣なコメントがこの曲のタイトル・フレーズとなり、とらわれの女性の孤独な窮地を完璧に思い起こさせる惨めなメロディに結びつけられている。フライの歪んだやさしさをちょうど良い加減に織り込んだ歌い方に、イーグルス史上最も愛されているハーモニーを添えた『いつわりの瞳』は、1976年グラミー賞最優秀ポップ・パフォーマンスを受賞している。

『アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン』 (1975)


2年前の『ならず者』収録の『ドゥーリン・ドルトン』と同様、フライとヘンリーは『呪われた夜』収録のこの曲でも、冷え切った愛の物語を共同リード・ヴォーカルで歌っている。この曲を聴いていると、イーグルスの2枚看板はなぜ、共作したほどには頻繁に、一緒にヴォーカルをとらなかったのかとの疑問が生じる。結局のところ、イーグルスというのは何よりもまずハーモニーのバンドだったということなのだろう。『アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン』は2人のメイン・ヴォーカリストの最盛期を聴かせてくれる。

『ニュー・キッド・イン・タウン』 (1976)


『ホテル・カリフォルニア』ではグレン・フライがリード・ヴォーカルを担当したのは1曲だけだったが、それが『ニュー・キッド・イン・タウン』だったことは大きかった。ドン・ヘンリーとJ.D.サウザーが共作したこの曲は、愛とはいかにすばやく色あせるのか、ということについて歌っている。「同時に、特に音楽業界での名声のはかなさについての曲でもある」とヘンリーは語っている。「基本的にこう言っているんだ。「僕らが今、イケイケなのは分かっている。でも、そのうち誰かがやってきて、僕らの代わりを務めることも分かっているんだ。音楽でも、恋愛でもね」」。イーグルスのこの曲への信頼度はゆるぎなく、この曲はアルバムからの初のシングル曲となり、あっという間に彼らにとって3曲目のナンバーワンヒットとなった。

Translation by Kuniaki Takahashi

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