『時は流れて』 (1976)


イーグルス1976年の傑作アルバムの代表曲はタイトルトラックの『ホテル・カリフォルニア』かもしれないが、アルバム全体を1つにまとめあげているのはこのディープ・カット(アルバム中に埋もれた曲)『時は流れて』である。この失恋バラードはA面の最後の曲であり、さらにそのリプライズ(反復)でB面が幕を開ける。『ホテル・カリフォルニア』と同じく、『時は流れて』のリード・ヴォーカルはヘンリーが担当しているが、この曲ではまたしてもフライとの奇跡的な共作だ。この2人のソングライティングは、初期の頃にはしばしば、気楽さや自由な人生を称賛していたものだが、『時は流れて』が扱っているのは痛恨の後悔である。いわく「もっといろいろできたはずだったんだ、ベイビー。自分が置き去りにしてきたことへの後悔を止めることができない。」

『駆け足の人生』 (1977)


「僕はあるドラッグ・ディーラーが運転するコルヴェットの助手席にいて、ポーカーをしにいくところだった」とグレン・フライは2013年のドキュメンタリー作品『駆け足の人生~ヒストリー・オブ・イーグルス』で語っている。「次の瞬間、僕らは時速145キロで走っていた。ちょっと待てよ! 僕が「おいおい」と言うと、彼はニヤリと笑ってこう言ったんだ。「駆け足の人生だよ」。僕は「これは曲のタイトルになるぞ“」と思った」。ジョー・ウォルシュのリフをベースに、彼がメンバーと共作したこの曲は、70年代LAデカダンス最深部からのレポートの決定版で、ヴォーカルはヘンリー、フライはクラヴィネットをファンキーに弾いている。もちろんイーグルスはそんなライフスタイルを誰よりも体現していたし、そのことに自覚的でもあった。その両方をやっているのがこんなに格好良く聞こえることは滅多にない。

『ハートエイク・トゥナイト』 (1979)


フライとJ.D.サウザーがサム・クックを聴きながらジャム・セッションをしている時に、のちに『ハートエイク・トゥナイト』になるAメロが作り上げられた。しかし、ボブ・シーガーがロサンゼルスに来るまで、それ以上の進展はなかった。フライはシーガーにそれを聴かせた。その時点では、ちょっとしたメロディに手拍子が入っていただけだ。するとシーガーは、フライによると「思わずサビを口走った」(サウザーはこう振り返っている。「グレンが電話してきてこう言ったんだ。「この曲の作者が4人になっても構わないかな」。で、僕は別に構わないと答えた。すると彼はこう言ったんだ。「そうか、ありがとう、シーガーがついさっき、こんなのを歌ってくれてさあ」」)。ボブの貢献はその程度のことではあったが、フライにはそれで十分だった。フライとサウザー、ドン・フェルダーは、そこからこの曲をサクサクと仕上げた。「歌詞には何の重みもないんだ」とフライは楽しそうに振り返る。「この曲が描いているのは行きずりの関係にすぎない。もともとそういう意図だったんだ」。フライのパフォーマンスについては、ジョー・ウォルシュのシンプルな意見に勝るものはない。「この曲でのグレンは必死だったよ」

Translation by Kuniaki Takahashi

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