映画史に残るボウイのサウンド&ヴィジョン12選

Photo: (Harrison Funk/Zuma/Corbis)


『ポイント・ブランク』(『アンダー・プレッシャー』)
プレッシャーとは自分自身が作り出すものであって、それを超える状況は普通の生活では起こらない。だが、10年ぶりの高校の同窓会で倫理的危機に直面した、プロの殺し屋が抱えるプレッシャーは凄まじい。マーティン・ブランク(ジョン・キューザック)が陥った状況がまさにそれだ。彼の殺し屋としての人生は、かつてのクラスメイトが連れてきた幼児と視線を交わした瞬間に、根底から覆される。ステレオからはデヴィッド・ボウイ(とフレディ・マーキュリー)の曲が流れ、彼にこう語りかける。「この世界の現実が何なのかを知ることは恐ろしい/仲間たちが見える/ここから出してくれと叫んでいる」ボウイはいつも独特のやり方で人々の心を揺さぶるので、マーティンがいつの間にか命を奪う側ではなく救う側となっているのも意外ではない。

『汚れた血』(『モダン・ラヴ』)
フランス監督レオス・カラックスが86年に公開した作品の構想は、あたかもボウイのコンセプト・アルバムをベースにしているようだ。舞台は一風変わった近未来のパリ。愛の無いセックスで感染する恐ろしい病気が蔓延し、若者の命を奪っている。ある晩、アレックス(ドニ・ラヴァン)は、彼のボスでガールフレンドのアンナ(ジュリエット・ビノシュ)と共に、狭いアパートの一室に身を潜めている。ラジオをつけ、「ただ音楽に身を委ねよう」とアンナに話しかける。次の曲は『モダン・ラヴ』だとDJが告げた時、アレックスの抑えきれない感情が爆発する場面は、映画史に残る名シーンだ。ボウイの音楽の言葉では言い表せない効果を、ラヴァンの激しく揺れる身体が雄弁に語っている。若さと生きていることの素晴らしさを見事に伝えたこのシーンは、30年後にノア・バームバックとグレタ・ガーウィグが、『フランシス・ハ』で、そっくりそのまま再現した。愛の定義は常に変わり続けるが、ボウイは永遠に不変だ。

Translation by Aki Urushihara

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