放送終了から50年、アニメ版ビートルズを振り返る


番組の構成はシンプルだ。1963年にビートルズが出演したBBCラジオ、『Pop Goes the Beatles』のテーマ曲のような音楽が流れ、ビートルズの4人がドタバタに巻き込まれる。頻繁に吸血鬼が登場し、博物館の展示物が動き出し、ジャングルやアメリカ西部の牧場が舞台になる。次にシング・アロングのコーナーが始まり、画面に歌詞が映し出される。コーナーが終わると、また荒唐無稽な冒険が始まる。ビートルズの4人が大部屋で共同生活を送り、一緒に寝起きし、ギターをかき鳴らしながら車を乗り回し、映画を見に行くという設定は、プレティーンだった頃のビートルズが思い描いた夢の生活だったかもしれない。

番組の構成を聞いただけで既にバカバカしいとお思いかもしれないが、アニメーションには擬人化された動物も登場し、ビートルズに追い払われたり、恋を諦めさせられたり、時には助けられたりもする。ますます下らないと思われるかもしれないが、この番組は実はかなりウィットに富んでおり、巧みに作られている。

シング・アロングは、2つのエピソードの間を埋めるためのコーナーで、リンゴ・スターを小道具係の代理としてステージに上げるところがサミュエル・ベケットの演劇のようだ。そして他のメンバー3人のうち1人が舞台から聴衆に大きな声で歌うよう呼びかけ――単純な保護者は、この場面がお気に入りに違いない――舞台セットの一部を披露している。

シング・アロングのコーナーには、当時のアニメーションでは見られない遠近法が使われている。画面は一面塀のようになっていて、1か所だけ穴が開いている。つまり、スクリーンの95パーセントは平面的で全く動きがなく、視聴者の目はそれ以外の場所に集中する。そして静止画像が並ぶ様子を見て、観客はこの素敵なミニビデオの意味を解きたくなる。まるでジョセフ・コーネルの箱作品(訳注:ガラス板で閉じた箱の中にコーネルの身の回りの物を入れて構成する作品)が、ビートルズ中期の曲に合わせてダンスしているかのようだ。

番組のメインである冒険の場面は極端に平面的に見えるかもしれない。ビートルズは右から左に駆け回り、魚や様々な乗り物、鳥も同じようにパタパタと画面を飛び交い、いろんな色が行ったり来たりしている。そしてアメフトの攻撃のように、進む方向を間違えるお約束もある。小さなことかもしれないが、『イエロー・サブマリン』の画面も極端に平面的で、ここではカラフルな羽毛の鳥だが、映画ではグローブとその手下が絶えずスクリーンを左右に行き来している。

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第33話『Nowhere Man/Paperback Writer』のリンゴ YouTube

Translation by Satoko Cho

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