映画『キャロル』制作の裏にある真実の愛の物語とは

しかし映画は議論でも法律でも推論でもない。またある特定のトピックや物語を取り囲むプレッシャーのバロメーターでもない。現実的にはゲイの権利の問題に進歩とみなされているものがある。しかしハイスミスの原作にナジーが加えた変更点の中で最も賢明なものは、文化がどれほど変化したのかを見せるのではなく、いかに変化していないかを見せるための測定器となっている。

キャロルと彼女の夫、そしてそれぞれの弁護士の間で起きる親権争いの中で、観客はキャロルがセラピストの治療を受けていることを知る。セラピストはキャロルの同性愛を一時的に正気が失われた結果だと診断する。もし彼女がセラピストの診断に進んで同意すれば、おそらく親権問題でより有利な条件を手にすることができただろう。しかし彼女はそうしなかった。ハイスミス自身が1948年に彼女自身を"治療"しようとしたこと、若い人たちが「ゲイを追い払うために祈りに」行く、転向のためのキリスト教信者のキャンプのような場所で同性愛が引き続き病的なものとみなされることに同意しなかったのだ。





(写真左)監督トッド・ヘインズと(写真右)キャロル役のケイト・ブランシェット(Wilson Webb/Weinstein Company)

監督のトッド・ヘインズは語る。「私たちは常に進歩しているという考え方が好きだ。しかし歴史を見ると、進歩はいつも意外なものに脅かされていた」。ヘインズはキャロルとテレーズの過ごす時間を不安定さと変わりやすさの一つの表れと見なし、彼女たちが直面する多くの束縛であると考えていた。

「これは戦後という時代に押しつぶされた文化である。おそらく道徳的姿勢と社会的行動の処方箋を強化しただけだっただろう。人々にしがみつくものを与えたからだ。でもキャロルとテレーズのいた街と文化には当時、本当の移行期にあるという感覚があった」。この映画の中で最も驚くべき瞬間の一つは、ブランシェットがシカゴで車から降りてくるシーンだ。彼女はスラックスとフラットシューズを履いている(劇的に温度が低いため、キャラクターがパンツを履いているのを突然目にすることが大きな変化になる)。「その通りだ」とヘインズは言う。「しかし同じ夜の遅い時間に出かけるとき、彼女はガードルとスカートに着替え、ヒールの靴を履いている」

Translation by Yoko Nagasaka

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