ジェフ・ベックが語る、ジョージ・マーティンとの思い出:「彼が僕にキャリアを与えてくれたんだ」

75年の傑作『ブロウ・バイ・ブロウ』で、ジョージ・マーティン(写真右)をプロデューサーに迎えたジェフ・ベック(写真左)(Photo by Michael Ochs ArchivesIan / Dickson/Redferns / Getty Images



またジェフは、ロンドンにあるマーティンのAIRスタジオ で過ごすことで、彼の人柄と独特な話し方に気付いたという。「染み一つない清潔な」服を着たマーティンは、ギターのゆがんだ音を嫌った。そして父親が大工、母親が看護師という労働者階級の家庭で育ったにもかかわらず、彼の話し方には教養のある丁寧な(しかし決して相手を見下さない)雰囲気があった。「変な話、俺はいつも彼は王室の人なんじゃないかって思ってたんだ」とジェフは言いながら笑った。「ロックンロールの世界で初のクイーンズ・イングリッシュを話す男。彼の声はかなり上品だったね。ある夜、(キーボードの)マックス(・ミドルトン)に言ったんだ。"後をつけて、彼がバッキンガム宮殿に入っていかないか確かめてみようぜ?"ってね」

しかし他のミュージシャン達が口をそろえて言うように、ジョージ・マーティンはロックンロールを見下さなかった。曲がそれまでにない方向へ向かおうとする時は、なおさらそうだった。アルバムに収録されているサウンドの粗さが魅力的な『分かってくれるかい』とエネルギッシュな『フリーウェイ・ジャム』は、ファンク、ジャズ、フュージョンが融合している曲で、ジェフのそれ以前の曲と異なるサウンドに仕上がっている。キーボードのマックス・ミドルトン、ベースのフィル・チェン、ドラムのリチャード・ベイリーという新たなバンドメンバーは、それらのジャンルに柔軟に対応したという。

「ジョージとリチャードはすぐ意気投合したし、マックスはすごいジャズ・プレイヤーだったんだ」とジェフは当時を回想した。「俺がジャズっぽい曲を弾いてたから、ジョージは俺がどこに向かってるか分かってた。これも彼がうまく導いてくれた道だったんだ」(アルバムに収録されているスティーヴィー・ワンダーが書き下ろした『セロニアス』では、クレジットこそされていないがスティーヴィー本人がクラビネットを弾いている。ジェフはこの曲が、彼がスティーヴィーのアルバム『トーキング・ブック』の制作に参加した際のアウトテイクだと教えてくれた。つまりジェフ、マーティン、スティーヴィーの3人のスタジオ共演は、残念ながら実現していなかった。)

さらにジェフはトーキング・モジュレーターを使ったレゲエ調の『シーズ・ア・ウーマン』が、ファブ・フォーのオリジナル・ヴァージョンを手掛けたマーティンではなく、R&Bシンガーのリンダ・ルイスからインスパイアされていると打ち明けてくれた。「ジョージがあれを気に入ってね」と自身のヴァージョンについて話すジェフは「彼はロンドンで一番のヒッピーな男だった」と続けた。そんな彼は、アルバムのラスト・トラックでオーケストラのアレンジが見事な『ダイヤモンド・ダスト』を特に鮮明に記憶している。初めて収録した際にジェフが「少し時代遅れなサウンド」だと感じた同曲に、マーティンがメロディーの盛り上がりを強調するために弦楽器パートを加えることを提案したという。「曲を完成させた彼がフワッと入って来て、"この曲はフランスの恋愛映画を思い出させてくれる!"って言ったんだ」こう言いながらジェフは笑った。「俺は"エフェクト全部を台無しにしてくれたのか!アルバムに入れないかもね!って言ったんだ。彼は俺にとって一番最悪なことを言ったとは気付いてなかったさ。でも美しい曲だと思った。マーティンが曲を磨いてくれたんだ」




Translation by Miori Aien

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