ジョン・ケイルが語る、ルー・リードと『Music for a New Society』

Shawn Brackbill

自作リメイク『M:FANS』リリースもジョン・ケイルが振り返る自己探求の日々



ジョン・ケイルが自身の実験的なソロ・アルバム『Music for a New Society』について思い起こすことといえば、個人的な混乱と不安ばかりである。1968年にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退して以来、名盤との誉れ高い1973年の『Paris 1919』や、その翌年の『Fear』で、彼はアート・ロック、ミニマリスト・クラシック、ストレート・ロックなどさまざまな様相の音楽を探究していた。これに並行して、ザ・ストゥージズ、ニコ、パティ・スミス、ザ・モダン・ラヴァーズなどのプロデュースも行っていた。しかし1982年の『Music for a New Society』制作をきっかけに、彼はまるで実在の袋小路に迷い込んだかのように方向感覚を失い、苦闘し始める。





「なぜ自分がアヴァン・ギャルドをやめて、『Paris 1919』を制作してしまったのか、自分がロックンロールに何を期待していたのか、当時はそんなことを理解しようとしていた」。ある朝早く、ローリングストーン誌のインタヴューに答えて、ロサンゼルスから彼は語った。「自分の音楽の方向性を見失っていた。だから私は、原点に戻ってやり直すことにした。故郷のウェールズに戻り、ウェールズの詩人ディラン・トマスに戻り、ディラン・トマスについての曲を書いたりした。私は自分のバックグラウンドの一体どこで迷子になったのかを突き止めようとしていたんだ」





そんな時期を今振り返ってみれば、彼は我ながらよくがんばった、「頑固に最後まで押し切った」ことに感心するというが、今でも当時の不安をまだ抱いているのだという。彼はありとあらゆる考えを録音することを自らに課し、自分の内側からアルバムを絞り出していた。出てきたものは、殺風景で希望のないものばかりだった。曲の登場人物は、誰もが身動きが取ない状態だった。彼らは自分の欠点に気がついているのに、そのことについて何も変えようとはしなかった。「今の目で見れば、はっきり言えば、当時の自分そのものだなということになるね」と彼は述べている。





現在73歳のケイルは今回、この『Music for a New Society』を再訪し、ほとんどの曲を自身の変奏曲集となる『M:FANS』として再録音した。30年前に彼がスタジオに閉じこもって以来、さまざまな変化があった。実験してみたい新しいテクノロジーも出てきた。一緒に録音する新しい友だちできた(ダーティー・プロジェクターズのアンバー・コフマンが『Close Watch』で歌っている)。後知恵もついた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでは目の上のたんこぶだったルー・リードが『M:FANS』のセッション中に亡くなった時には、ケイルは新たな激しい感情に流された。これらすべてが、『If You Were Still Around』2バージョンの豊かな質感、『Changes Made』のときめくようなドキドキ感、『Thoughtless Kind』のエレクトロR&B、『Close Watch』のヒップホップ・ビートに詰め込まれている。この新しいアルバムは、比較用にオリジナルアルバムとカップリングされている。その違いは圧倒的だ。





ケイルが、この作品の難しさを振り返る。


Translation by Kuniaki Takahashi

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