ボブ・ディランの1980年代人気ソング・ベスト10

第3位:『エヴリィ・グレイン・オブ・サンド(Every Grain of Sand)』


1981年の『ショット・オブ・ラブ』は非常に多様性のあるアルバムだが、『エヴリィ・グレイン・オブ・サンド』という素晴らしく崇高な曲で締められている。『プロパティ・オブ・ジーザス』などを除けば、このアルバムは厳密にはキリスト教の作品ではない。しかし、『エヴリィ・グレイン・オブ・サンド』では、随所に聖書が引用されている。"カインのように、私は今、断ち切るべき物事の連鎖を前にしている。激しい怒りの瞬間、主の御手が見える。全ての揺れ動く葉の中に、全ての砂の粒の中に"ファンの多くは、この曲の決定版は、『ブートレッグ・シリーズ第1~3集』に収録されているデモ・バージョンだと考えている。ディランの飼い犬の鳴き声が後方から聞こえるが、曲とうまく合っているようだ。



第2位:『ブラインド・ウィリー・マクテル(Blind Willie McTell)』


異世界でボブ・ディランは、1983年のアルバム『インフィデル』に『ブラインド・ウィリー・マクテル』や『フット・オブ・プライド』、『私をとりこにした人』を収録していただろう。そして1984年にデイヴィッド・レターマンのトーク番組でバック演奏を務めたザ・プラグスというニュー・ウェーブ・バンドを伴い、意気揚々とツアーに出かけ、大々的なカムバックを果たしていただろう。こうして80年代のボブ・ディランの軌跡は全く別なものになっていたはずだ。しかし、現実世界ではそうはならなかった。『ブラインド・ウィリー・マクテル』は、ディラン史上最高の曲の一つだが、当時のディランは、発表するほどの曲ではないと判断した。

ディランは、1984年にローリングストーン誌にこう語っている。「良い曲だとは思わなかった。なぜあの曲が俺の手を離れて世に出たのかは分からない。誰かがリリースしたがる曲とも思えなかった」この曲は、1991年のディランの最初のブートレッグ・アルバムでようやくリリースされ、驚くほどの高評価を得た。ディランが初めてこの曲をライヴで演奏したのは、1993年にザ・バンドがカヴァーを出した後だった。そしてその後20年間、ディランは何度もライヴで演奏した。



第1位:『ジョーカーマン(Jokerman)』



80年代前半、ディランは長い時間をかけてカリブ海周辺を航海していた。1984年、ディランはローリングストーン誌にこう語った。「俺は、ある男と船を共有していた。『ジョーカーマン』のイメージは、カリブの島に居た時になんとなく浮かんだ。島はすごく神秘的で、太古を思わせるような形や影があった。現地でジャンビーと呼ばれている精霊から着想を得てこの曲を書いた」『インフィデル』の1曲目となった神秘的なこの曲は、後にシングルとしてもリリースされたが、ヒットチャート入りすることはなかった。それでもディランはこの曲のプロモーションビデオを作り、1984年にはデイヴィッド・レターマンのトーク番組で伝説的な演奏をした。その後、10年間の封印を経て、ディランはある日突然ステージでこの曲を歌い、その後103回連続でライヴで演奏している。




Translation by Satoko Cho

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