ボブ・ディランの1980年代人気ソング・ベスト10

Photo by Keith Baugh/Redferns

低迷期とされながらも数々の挑戦をした1980年代のディラン。この時代に生まれた名曲とは?


1980年代は、ボブ・ディランのキャリアの中でもどん底の時代だったと広く認識されている。この時期のディランは、ゴスペル音楽に傾倒し、中途半端なアルバム『ノックト・アウト・ローデッド』を制作し、さらには既に忘れられている映画『ハーツ・オブ・ファイヤー』などに出演し、迷走していた。

そんな中、ディランは7枚のソロアルバムをリリースし、トラヴェリング・ウィルベリーズからは初アルバムを出した。本物のディラン・ファンは、80年代の駄作の中に、『アグリエスト・ガール』や『アンダー・ユア・スペル』などの多くの名作が紛れていることを知っている。今回の読者投票では、ディランの80年代の曲の中から好きな曲を挙げてもらった。結果は以下のとおりだ。



第10位:『シリーズ・オブ・ドリームズ(Series of Dreams)


80年代、ボブ・ディランは紛れもなく素晴らしい曲を収録しながら、それらをアルバムから排除するという不可解な行動を繰り返していた。このもどかしい習慣の非常に良い例が、『シリーズ・オブ・ドリームズ』だ。1989年のアルバム『オー・マーシー』のために収録されたこの曲はとても魅力的だが、ディランには不満だった。プロデューサーのダニエル・ラノワが強く推せば推すほどディランはかたくなに拒み、曲は長過ぎるし、だからといって短くするのは嫌だと譲らなかった。それからわずか2年後、この曲はリミックスバージョンとして息を吹き返し、『ブートレッグ・シリーズ第1~3集』に収められた。そしてミュージックビデオも制作され、1993年までにはディランはこの曲をライヴで演奏するまでになっていた。2008年の『テル・テイル・サインズ』には別バージョンが収録されている。



第9位:『ブラウンズヴィル・ガール(Brownsville Girl)』


アルバム『欲望』でのジャック・レヴィとの共作や、ザ・バンドのメンバーとの数曲の合作を除き、ディランは80年代に入る前のほぼ全ての曲を独りで書いていた。しかし、80年代に入ると、トム・ペティからキャロル・ベイヤー・セイガー、ティム・ドラモンド、ロバート・ハンター、そしてボノに至るまで、大勢と合作するようになった。中でも最も壮大なコラボレーションは、11分の叙事詩、『ブラウンズヴィル・ガール』(サム・シェパードとの共作)だ。1986年の『ノックト・アウト・ローデッド』に収録されているが、この曲がなければアルバムはとんでもない駄作になっていただろう。歌詞はあちこちに飛ぶが、その度に1950年のグレゴリー・ペック主演映画、『拳銃王』を見ていた頃のおぼろげな記憶に戻っていく。誰が書いたかは分からないが、"人々は自らが信じることをせず、最も楽な道を選ぶ。そしてそれを悔やむ"や、"ここらじゃ不要品交換会でさえも堕落しつつある"といった表現は素晴らしい。

Translation by Satoko Cho

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