キューバは次世代のロック一大市場になり得るか?

メジャー・レイザーのライヴにしても、キューバ文科省(文科省がこの国のミュージシャンの多くに給料を支払っているのだ)と、キューバ・アメリカ間の文化交流を推進しているNGO、The Musicabana Foundationプロデューサーのファビアン・ピザーニ(Fabien Pisani)、そしてカリブ諸国との縁の強さをアピールするメジャー・レイザーのマネジメント(メンバーの1人はトリニダード出身、もう1人はジャマイカ出身だ)の3者間による、14か月にわたる交渉の末に実現したのである。


2016年3月にキューバにてライヴを行ったメジャー・レイザー(Photo by Sven Creutzmann/Mambo Photo/Getty Images)

メジャー・レイザーは結局、15万ドルの赤字でコンサートを開催することとなった。「まるで5つのバラバラのPAシステムを使うみたいに、さまざまの調整をしなくてはならなかった」とディプロは振り返っている。課題は山積だった。ヴィザ取得には長い時間がかかった。インターネット・アクセスがほとんどなく、アメリカの音楽の販売を禁止してきた歴史のある国でのプロモーション活動は困難を極めた。ステージに登場する人全員が、経歴調査で合格しなければならなかった。ビッグ・スクリーンに映し出すビデオは事前に許可を得る必要があった。「人前でシャツを脱いだり、他人に脱ぐことをすすめることも禁止されていた」とディプロは語る。「それと、政治に話は口にしないようにしていた」

ライヴ開催が決定した後も、メジャー・レイザーは集客ができないのではないかと案じていた。しかし、ピザーニの尽力により、彼らの音楽がキューバのアンダーグラウンド・サーヴィス"エル・パケット(El Paquete)"で事前に流通されることとなった。これは、住民がサムドライヴを持ち込むと、新しい海外の音楽やメディアを入れてくれるというものだ。「あれがなかったら、こんなコンサートはできなかったと思う」とディプロは述べている。

Translation by Kuniaki Takahashi

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