なぜロバート・メイプルソープは人々の記憶に残り続けるのか

彼は恋人で、当時世界的に有名だったアートコレクターのサム・ワグスタッフを自分のパトロンに選んだ。それによりワグスタッフを写真のコレクター、そして写真界で影響力を持つ存在へと変えたのだ。「ドキュメンタリーフィルムの中では小さくしか扱っていないが、メイプルソープに会ったときのワグスタッフが写真に興味を持っていなかったのは非常に重要なことだ」とベイリーは語る。

「メイプルソープは自分の望む写真を撮った。しかし人々からは "これはアートではない"と言われた。彼はそれに固執した。メイプルソープは機転が効いたから、写真という形式を擁護するためにはキュレーター、もしくは適格な資格を持った人が自分には必要だということがわかったんだ。そこにサム・ワグスタッフが現れた。彼は写真に興味がなかった。メイプルソープは"彼が写真に興味を持つようにしむけよう。そうすれば彼は写真の見方になる"と思ったんだ。メイプルソープを批判しているわけではない。彼は自分が誰と組むかということについて戦略的に秀でていたんだ」。

ある意味、このドキュメンタリーフィルム『Look at the Pictures』はメイプルソープが望んだものが成就した作品だと言える。彼の才能の一部は、彼の作品を議論し、応援してくれる人を見つけることだったからだ。彼はジャーナリスト、批評家、キュレーターたちを求めた。自分がやっていることを説明する言葉や枠組みを彼らが見つけ、それによって自分が渇望する水準の名声や悪評を得たいと思っていたからである。

「アートは何かに対して開かれたものであるというのがメイプルソープの本質だ。彼は多くの人が自分の作品について書き、語り、彼の物語を伝えることを望んでいた」とベイリーは語る。「僕が思うに、彼は自分以外の人の声になろうと考えたことはないだろうね」。

Translation by Yoko Nagasaka

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