プリンスの長年のパートナーが語る『パープル・レイン』をめぐる狂騒、ワーナーとの確執

当時のツアーマネージャーから彼を紹介してもらった時、プリンスは軽く握手して頷いただけだった。ツアーに加わってから2、3週間経ったある日の夜、私はバンドのメンバーたちと一緒にホテルのバーで酒を飲んでいた。そこにチックに付き添われたプリンスがやってきて、バンドのメンバーが全員一瞬にしてかしこまった。まるで王様を前にした家来のようにね。私の目には奇妙に映ったが、みんな演奏のミスなどを指摘されることを恐れていたんだろう。バンドのメンバーがあんな風にアーティストと接するのを、私は見たことがなかった。彼がその場に加わった途端、ただならない緊張感が漂うのを感じたんだ。

幸か不幸か、たまたま私の隣の席が空いていて、そこにプリンスが座った。私はチックに席を譲ろうとしたが、彼は座ろうとはせず、着席するようにと手振りで示した。重たい空気が流れる中、私は何か話そうと言葉を探していたが、先に口を開いたのはプリンスだった。彼は私のほうを向き、どこか無邪気な様子でこう言った。「ジェームス・ブラウンの話を聞かせてくれ」何の前触れもなく、ただそう言ったんだ。あまりに急で、私は何を話すべきか考えを巡らせなくてはならなかった。バンドのメンバーも皆、私の緊張を感じ取ったようだった。話せば長いが、その時に私はプリンスと初めて会話らしい会話を交わしたんだ。


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『彼は私のほうを向き、どこか無邪気な様子でこう言った。「ジェームス・ブラウンの話を聞かせてくれ」』―アラン・リーズ(Courtesy of Alan Leeds)

―あなたがチームに加わった時、彼のマネージメントは既に撮影に入っていた『パープル・レイン』の配給契約を取り付けようと奔走していたと言われています。

そのとおりだ。当時の私はまだマネージメントチームとは関わりがなく、そのことを知ったのも『1999』ツアーが終わってからだったがね。だが彼がノートに何かを書き留めている姿は度々目にしていた。曲や歌詞のアイディアだろうと思っていたが、実際には映画のストーリーに関するものだったんだ。

Translation by Masaaki Yoshida

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