プリンスの長年のパートナーが語る『パープル・レイン』をめぐる狂騒、ワーナーとの確執

プリンスが絶大な信頼を寄せたアラン・リーズが語った、『パープル・レイン』の桁外れの成功がもたらした混乱、そしてレコード会社との対立(Photo:Getty)


―『パープル・レイン』撮影時のエピソードについて聞かせてください。周囲の人々は映画の出来に期待していましたか?

していなかったね(笑)撮影に携わっていた人間の多くはアマチュアだった。ハリウッドで本場の撮影を経験したことがない、B級映画専門の人間の集まりといった感じだったんだ。音楽に基づいた映画というコンセプト自体がまだ一般的ではなかったから仕方ないがね。ミュージックビデオをはじめ、現在でこそ映像はミュージックビジネスの重要な一部となっているが、当時はそうではなかった。撮影チームの人間の多くは、「この素人たちに映画を作らせるなんて、音楽業界はどうかしてる」って思っていたはずだよ。プリンスが誰かもよくわかっていない様子だったから、彼らの仕事に対するモチベーションも低かった。当時は映画産業と音楽業界の間に、それぐらい大きな隔たりがあったんだ。『1999』の成功とワールドツアーはプリンスの名前を世界中に轟かせたが、それはあくまで音楽ファンの間に限られていた。映画の世界では、彼は全く無名の新人に過ぎなかったんだよ。

―先見の明を持っていたんですね。

彼は音楽におけるビジュアル面の重要性を深く理解していた。マドンナやマイケル・ジャクソンと同じくらいね。彼は両者を結びつけた先駆者の1人だったんだ。その数年後、私がツアーマネージャーとして彼と共に世界中を飛び回っていた頃、彼はペイズリー・パーク・レコードを設立し、そこにオフィスを構えることになった私は、文字どおり四六時中彼と行動を共にするようになった。ある日私がオフィスで仕事をしていた時、プリンスから電話があった。その日はプリンスにとって典型的な1日で、朝10時か11時頃にノートを片手にスタジオにやって来て、自分のオフィスで軽く仕事を済ませ、午後1時頃からスタジオでレコーディングを始めた。彼はアルバムの制作に2ヶ月もかけるような平凡なアーティストとは違い、毎日必ず何かしらレコーディングしていた。たとえその曲の用途が決まっていなくともね。そしていつも夕方5時か6時頃になると私のオフィスに電話してきて、得意気にこう言うんだ。「今日録ったやつ、少し聴いてみるかい?」残念なことにその時スタジオで耳にしたのがどの曲だったか思い出せないんだが、ものすごくファンキーな素晴らしい曲だった。その曲は後にアルバムに収録されたかもしれないし、もしかしたらスタジオのどこかに眠ったままになっているかもしれない。私がファンク好きだということを彼はよく知っていたから、きっと気に入ってもらえると思ったんだろう。互いの声が聞こえないほどの大音量で曲が流れる中、私は彼の耳元でこう尋ねたんだ。「本当にこれを今日1日で録ったのか?」曲の出来は言わずもがな、ミックスもほぼ完璧に近い出来だったからね。彼はこう答えた。「昨夜書いたばかりで、今日早速録ってみたんだ」私は信じられないといった様子で首を横に振った。それだけでなく、彼はその曲のミュージックビデオのアイディアについてまで話してくれた。彼は既に明確なコンセプトを考えついていて、ストーリーボードを用意すればすぐにでも撮影に入れるほどだった。恐るべき才能だと思ったよ。彼と仕事を始めて数年が過ぎていたが、凄まじいペースで優れた作品を生み出し続ける彼に、改めて感服せずにはいられなかった。「まさかビデオのアイディアまで考えついているとはね、驚いたよ」私がそう伝えると、彼はこう言った。「分かってないね。君はオールドスクールな男だから仕方ないかもしれないけど、近頃のキッズは曲を聴くだけじゃ物足りないんだよ。ミュージックビデオはもはや曲の一部なんだ」

Translation by Masaaki Yoshida

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