プリンスの長年のパートナーが語る『パープル・レイン』をめぐる狂騒、ワーナーとの確執

―『パープル・レイン』はリリースと同時に世界中を席巻しましたが、あなたとプリンス本人は、それが時代を象徴する作品になると当時から確信していましたか?

そうだね。ただ状況を飲み込むには少し時間がかかったよ。というのも、あれほどまでの成功を収めたアーティストを、私はビートルズ以外に知らなかったからね。両者を比較するわけじゃないが、キャリア最盛期のジェームス・ブラウンですら、あれほどの狂騒を経験したことはなかった。あの作品はそれまでのプリンスのファンを熱狂させただけでなく、新たなファン層を大量に生み出したんだ。映画に登場する台詞をすべて暗記しているという人もいれば、ウェンディやボビーZといったキャラクターのコスプレでコンサートに足を運ぶファンもいたよ。

あの作品の途方もない影響力を肌で実感した時のことは、今でもはっきりと覚えているよ。ツアーの3日目はワシントンDCで、我々はウォーターゲートホテルに宿泊していたんだが、プリンスが髪を切りたいと言い出してね。どこに滞在していようとも、彼がそう主張するたびに、私たちは場を提供してくれる街のサロンを探さないといけなかった。店をまるごと貸し切られせてくれるところをね。従業員を休ませ、窓をすべて新聞紙で覆うことに同意してくれるという店には、彼らが希望する額を支払った。店主の中にはプリンスの大ファンで、サインとコンサートのチケットだけで十分だっていう人もいたよ。その日、彼のスタイリストはジョージタウンにあった店と話をつけた。私は同行せず、ホテルに残って仕事を片付けていたんだが、テレビでジョージタウンの街が大混乱に陥っているというニュースを目にしたんだ。プリンスが車から出てきてそのサロンに入っていくのを目撃した人間が騒ぎ立てたせいで、近隣の店にいた人々や噂を嗅ぎつけたファンたちが大量に押し寄せ、警察がウィスコンシン・アベニューを閉鎖する事態になってしまった。その様子をテレビで観ながら、私は思わずこう呟いた。「我々の手には負えないな」

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『パープル・レイン』でのプリンス 「キャリア最盛期のジェームス・ブラウンですら、あれほどの狂騒を経験したことはなかった」―アラン・リーズ(Photo:Getty)

Translation by Masaaki Yoshida

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