プリンスの長年のパートナーが語る『パープル・レイン』をめぐる狂騒、ワーナーとの確執

プリンスが絶大な信頼を寄せたアラン・リーズが語った、『パープル・レイン』の桁外れの成功がもたらした混乱、そしてレコード会社との対立(Photo:Getty)


―『ブラック・アルバム』の制作において、印象に残っているエピソードはありますか?プリンスが罪悪感を理由に、同作のリリースを直前に中止したことは広く知られています。

あの判断が直感的なものだったことは確かだ。あとは出荷するだけという段階での決定だったからね。彼は『ブラック・アルバム』をプリンスの作品ではなく、サイドプロジェクトのひとつとして捉えていたんだ。ジャズ寄りのインスト作品を発表していたマッドハウスや、ピュアなR&B
やファンクを追求したザ・タイムと同じようにね。ゲットー出身のR&Bアーティスト、そんな風にカテゴライズされることを、彼は何よりも嫌っていたんだ。

『ブラック・アルバム』は、プリンスが『パープル・レイン』でセルアウトしたという黒人層からの批判に対する回答だった。実際『プレイス・オブ・ユア・マン』のような、ストレートなロックンロールをよしとしないブラックミュージックのファンは少なくなかった。だが彼はブラック系のラジオ曲でかかるような、典型的なR&Bアーティストになるつもりはまったくなかった。また当時、メインストリームの音楽として認識されるようになったヒップホップがチャートを席巻していた。スタジオで過ごしていたある日の夜、彼は床に転がっていたビルボード誌を指差してこう言ったんだ。「ヴァニラ・アイスやMCハマーのような、ロクに歌えもしないやつらの曲がチャートのトップを飾り、人生をかけてアートを追求し続けているアーティストの曲がトップ10にすら入らないなんて、どうかしてると思わないか?」彼は当時の状況に大きな不満を抱えていたよ。

当時は誰もがパブリック・エネミーのようなアーティストに夢中になっていたが、我々はそうは感じていなかった。プリンスはエリックB&ラキムのことも理解できない様子だった。ミネアポリス出身の彼には、ブロンクスのストリートの価値観が理解できなかったんだろう。「やつらはただ喋ってるだけじゃないか。詩人としてはまぁまぁなのかもしれないけど、少なくともミュージシャンと呼べるような存在じゃない。DJと大差ないさ」彼はそう話していた。『ブラック・アルバム』は彼のそういう思いを形にした作品であり、同時に「プリンスはもうファンキーじゃない」という批判に対する回答でもあった。こんなのは俺にとって朝飯前なんだよと言わんばかりのね。

しかし彼はあの作品が怒りから生まれたことに罪悪感を感じ、直前になってリリースを中止した。今振り返ってみても、それが正しい判断だったと私は思っているがね。

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「彼は毎日欠かさずレコーディングしていた。とてつもない数の作品が未発表のままになっているんだ」―アラン・リーズ(Bertrand Guay/Getty)

Translation by Masaaki Yoshida

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