ヒラリー・クリントンは「トランプが不動産市場の崩壊を待ち望んでいた」と非難しているが、バブル崩壊の原因は彼女の支援者たちが作ったものだった。大きな社会的影響力を持ち、彼女を今後押ししている企業群を追求する。
ヒラリー・クリントンが2016年5月下旬に立ち上げた新たな反トランプ・キャンペーンは、ドナルド・トランプを"濡れ衣を着せられた被害者"に仕立て上げてしまった。一方で、民主党のクリントンが下劣で腹黒い人間のように見えてしまうという残念な結果になってしまっている。
反トランプ・キャンペーンの広告映像は、ニヤリと笑うトランプの写真をバックに「2006年、ドナルド・トランプは不動産市場の暴落を望んでいた」という文字が浮かぶシーンから始まる。
さらに金融危機の脅威をイメージさせる映像が続く。マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画『ロジャー&ミー(原題:Roger & Me)』風に、荒廃した土地の映像と共に「900万人のアメリカ人が職を失い、500万人が家を失った」というナレーションが読み上げられる。
映像はニヤけるトランプに戻り、「そして次期大統領を目指すこの男は・・・虎視眈々とチャンスを狙っていた」と表示される。
そして、不動産バブルの崩壊が富裕層にとってどんなに旨味のあるチャンスかを語るトランプの声が流れる。
「私は不動産バブルが弾けるのを待っている。その時こそ私のような富裕層は不動産市場に投資すべきだ。もしいわゆるバブルが崩壊すれば、今よりもっと儲けることができる」というトランプの発言を、2006年に行われたインタビューから引用している。
画面には「ドナルドが勝利した時、それはあなた方が負ける時」の文字。
このキャンペーン広告には多くの矛盾が含まれている。例えば、クリントンのキャンペーンが取り上げている市場崩壊自体は、バブルが弾けた後に底値で不動産を買い漁った人々によって引き起こされた訳ではない、という点。
元々の原因は、市場に投機的なバブルが存在していたことにある。そのバブルを膨らませた張本人はドナルド・トランプではなく、その一部は現在ヒラリー・クリントンの資金的なスポンサーとなっている、いわゆるウォール街の銀行家たちである。