ボブ・ディラン、60年代未公開コレクションの写真集を出版

PHOTO:©Daniel Kramer/courtesy of TASCHEN

アルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』や『追憶のハイウェイ61』のアルバム・ジャケットを撮影したダニエル・クレイマーが、60年代に撮影した未公開のコレクションを含む新たな本を出版する。

1964年、ウッドストックにあるスタジオで写真家ダニエル・クレイマーがボブ・ディランというシンガーの撮影の仕事を受けた時、クレイマーは彼のことをほとんど知らなかった。「撮影は1時間かそこらで切り上げる予定だった。でも結局5時間もかかったよ」とクレイマーは振り返る。「数週間後に仕上がった写真を持って彼の事務所へ行った。ボブはテーブルの上に広げた写真をチェックしてから、俺の方を見てこう言った。"今週フィラデルフィアへ行くんだけど、よかったら同行しないか?"」

ディランはクレイマーの仕事ぶりを高く評価していた。クレイマーは1964年8月〜65年8月の1年間で約30回に渡り、当時はまだ若きフォークシンガーの様々なショットを撮影した。これらの写真は、後にスーパースターとなるボブ・ディランのイメージを固める上で重要な役割を果たすこととなる。中でも有名なのは、1965年に発表された2つの代表的なアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム(原題:Bringing It All Back Home)』と『追憶のハイウェイ61(原題:Highway 61 Revisited)』のアルバム・ジャケット写真であるが、フォークシンガーのジョーン・バエズとのバックステージでのショット、マンハッタンで仲間たちとふざけ合う様子、ウッドストックでチェスをする姿など、リラックスした自然体のボブ・ディランを捉えた数々の貴重なショットも撮影されている。



クレイマーの新たな本『A Year and a Day』には、膨大なコレクションの中から彼の代表的な作品や未公開の貴重な写真が厳選されているという。未公開ショットの中には、初めてエレクトリック楽器を導入したアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム(1965)』のレコーディング・セッション中に、サウンド作りに苦悩する珍しい姿なども見られる。「1965年夏のニューポート・フォーク・フェスティバルで初めてディランがエレキギターを持った、とよく言われているけど、俺にしてみればそれは違う。まだ雪の降るその年の1月に、俺は『マギーズ・ファーム(原題:Maggie’s Farm)』の素晴らしいサウンドが初めてスピーカーから飛び出す瞬間に立ち会っているんだ。鳥肌が立ったよ」

『A Year and a Day』は約300ページのボリュームがあるが、クレイマー曰く、ディランにはまだまだ多くの未公開写真が残っているとのこと。「10枚の写真を撮って、気に入るのは1枚だけ。後はボツ。その繰り返しさ。ちゃんとチェックしていない写真もたくさん残っている。常に新しい発見があるんだ」と、クレイマーは語った。

Translation by Smokva Tokyo

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