ボブ・ディランとジョン・レノン、レアな二人のドライブ・ドキュメンタリーが公開

「もともと2人は奇妙な関係だった」1999年のGadfly Magazine誌のインタビューで、ペネベイカーはそう語っている。「あのシーンで、2人は私に面白い映像を録らせようとしているようだったが、同時にお互いを牽制し合っているような節もあった」世界最高峰のリリシスト2人によるそのやり取りは、オスカー・ワイルドのウィットというよりは、好意的に捉えてもジェイムズ・ジョイスのワイルドな自由連想法といったところだが、実際にはドラッグ中毒者2人によるナンセンスなやり取りというのが妥当に違いない。ディランの言葉は特に理解不能だ。「あれは会話と呼べるようなものじゃなかった」ペネベイカーはそう語る。「あの時のディランは完全にドラッグの影響下にあった。何を話しているのか自分でも理解していなかったはずだ」

その支離滅裂な会話内容は、まるで理解を求めようとしないダダイストによるスピーチのようだ。話題は第2次世界大戦でイギリス軍がヒトラーのナチス・ドイツを破った勝因(回答:テムズ川の存在)、故郷への想い、野球などから、ママス&パパスやジョニー・キャッシュ、そしてイギリスのフォーク・ロック・グループのシルキーといった同時代のミュージシャンたちにまで及び、ビートルズの他のメンバーについて言及されるシーンもある。

まともに意味が理解できる部分があるとすれば、ディランが吐き気を訴える場面だろう。「気持ち悪くて吐きそうだ」そう呻きながらディランはこう話す。「カメラに向かって吐くってのはどうだ?俺がカメラの前で披露したことのない唯一の行為だ。やっちまうか」隣に座ったレノンはふざけながらディランにこうけしかる。「悩みのタネは目の痛みか、そのグルーヴィーなデコか、それともクルクルの髪か?そんな時はZimdawn!たかが映画だ、遠慮するな。やっちまえ」参っている様子のディランは答えようとしない。ペネベイカーによると、その後レノンは音楽仲間の男性をメイフェアのホテルまで連れて行き、胃の中のものをすべて吐かせなくてはならなかったという。

1970年に行われたローリングストーン誌のヤン・ウェナーとのインタビューで、レノンは当時のをこう振り返っている。「俺たちは皆ヘロインで完全にキマってた。気分は最悪だったよ。カメラを向けられている間、俺は頭に浮かんだことを片っ端から口にしてた。キマッてる時の典型的な行動パターンだ。でも主役は俺じゃない。あれは彼の作品で、俺は彼のテリトリーに入ってしまってた。とにかくひどく居心地が悪かった」

Translation by Masaaki Yoshida

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