ボブ・ディランとジョン・レノン、レアな二人のドライブ・ドキュメンタリーが公開

ロンドン市街を走るリムジンの後部座席で支離滅裂なやり取りを交わすボブ・ディランとジョン・レノンのドキュメント映像が公開。

ロック界のレジェンド2人のレアなツーショットを収録したドキュメンタリー『Eat The Document』とは。

1966年5月、当時の若者たちはジョン・レノンとボブ・ディランの2人を「新世代の代弁者」と呼んだ。誰も聴いたことがない音楽を世に送り出す存在として、両者は当時の音楽シーンの頂点に君臨していた。前年7月に発表された『ライク・ア・ローリング・ストーン』で、ポップ・ミュージックの定義を押し広げてみせたディランは、2枚組の大作『ブロンド・オン・ブロンド』を完成させたばかりだった。一方レノンは、世界に衝撃を与えたビートルズの『リボルバー』に収録されることになる、アシッドの影響下で生まれた哲学的な歌詞と革新的なプロダクションが共存する『トゥモロー・ネバー・ノウズ』のレコーディングに臨んでいた。

本映像には、同時期にクリエイティビティの爆発を経験していた2人のレアなツーショットが収録されている。しかしカメラに収められたのは、両者のアートについての崇高な会話ではなく、ロンドン市街を走るリムジンの後部座席で支離滅裂なやり取りを交わす2人の姿だ。社会問題の解決に貢献するような内容にはほど遠いが、本映像がスーパースター2人のありのままの姿と、両者の間に存在した緊張感を捉えた貴重なものであることは間違いない。

本映像はディランにとって初のイギリスツアーの様子を追った『ドント・ルック・バック』の監督を務めたD・A・ペネベイカーによって撮影され、後に公開される予定だったドキュメンタリー『Eat The Document』に収録されている。前作における白黒映像を用いた映画風のアプローチが気に食わなかったディランは、本ドキュメンタリーの監督を自身で務めている。ロック史最大の愚行と揶揄されたディランのエレクトリック路線が大きな話題を集めていたこともあり、本ツアーは前年にも増して波乱万丈の内容となった。しかし本ドキュメンタリーの中心となっているのは、ライブ映像やバックステージの様子ではなく、どこかシュールレアリスム的なディランとその仲間たちの何気ないやりとりだ。

ロンドン郊外にあったバンドメンバーの溜まり場で夜を明かしたディランとジョン・レノンの2人が、ハイド・パーク内を走る車内で戯れる本映像が撮影されたのは、1966年5月27日早朝のことだ。ペネベイカーが手にしたカメラを前に、ディランはボブ・ニューウィスの音作りにおける手腕について語っている。

Translation by Masaaki Yoshida

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