ビヨンセ『レモネード』:自らを語ったポップ・クイーン

(Photo by Purple PR)

デビュー以来最も意欲的かつパワフルなアルバムで、ビヨンセが深層をえぐり出す。

新作を突如発表したビヨンセ。彼女にとって、プリンスが死去して間もないうちに本作を出したことにはどんな意味があるだろうか?我々にとって今回のリリースは、まだ巨人たちが存在することを思い出させてくれるものとなった。『レモネード』は、世界で最も有名なセレブリティが、感情のぶつかり合いや結婚生活の崩壊について歌ったアルバムだ。またポップの世界で最も尊敬され、最もクリエイティヴでもあるアーティストが、大々的に自分について語った作品でもある。アルバム全編を通じて傷心、裏切り、不倫などが取り上げられる。だが音楽に込められた激しい怒りや痛みにも関わらず、彼女はすべてを肯定すべきものとして扱う。ビヨンセにとって本作は、まるで福音書の一章にすぎないかのようだ。この章には、仰々しく騒々しい、そしてとんでもなく厄介な状態を招く『人生を一変させる魔法』が書かれている。



中指を立て、臨戦態勢に入った女王の姿がこれだ。アルバム最初の4曲は結局のところ、『あなたが浮気したんだから、償いはしてもらうわよ』ということであり、その後、問題は銃で解決しろと教える父についてのカントリー・ソングが収録されている。指輪をはめた夜を後悔していると歌うビヨンセことミセス・カーターは、本気そのものだ。



アルバムは、傷心のビヨンセが神に懇願する『プレイ・ユー・キャッチ・ミー』で幕を開け、続く『ホールド・アップ』で爆発する。自分の高潔な愛を無駄にした夫について嘆くこの曲では、アンディ・ウィリアムスがヴェガス流の甘い声で歌う名曲『もう離さない』からスタッカート調ストリングスと、ヤー・ヤー・ヤーズのニューヨーク・シティ・パンク・バラード『マップス』からサビのフレーズが使用され、ソウルジャ・ボーイの引用で締めくられている。


Translation by Mariko Shimbori

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