2016年大統領選におけるバーニー・サンダースの静かなる勝利

Photographer: Patrick T. Fallon/Bloomberg via Getty Images

サンダースは民主党の指名争いに敗れたものの、彼の主張はクリントンの主要な政策に採用され、党の将来的な方向性をも定める結果となった。

米国現地時間、2016年7月12日朝、バーニー・サンダースはヒラリー・クリントンへの支持を表明した。これは、大統領の座をドナルド・トランプ氏に明け渡してしまうことを恐れる民主党が、ずっと待ち焦がれていた瞬間でもあった。

サンダースのライバルに対する支持表明は、彼がそれまで展開してきた華々しい選挙戦の終わりを意味する。それと同時に、サンダースの展開した民主社会主義の勝利でもあった。サンダースは候補者レースに敗れたが、彼の主張はヒラリー・クリントンの政策や、大統領選へ向けた民主党の政綱にも大きな影響を与えた。

サンダース氏の支持表明に先立ちクリントン氏は、サンダース氏の2つの重要な政策を自らの基本方針に採用することを明らかにしていた。2016年7月上旬に発生したアルトン・スターリング氏とフィランド・カスティール氏の警官による2件の射殺事件と、ダラスでの警官襲撃事件が発生した直後の時期に、クリントン氏はサンダース氏の掲げていた教育プランを自分の政策に採用し、健康保険制度に関する方針にも積極的に歩み寄る姿勢を見せた。

サンダースを支持する若者層の取り込みを目論むクリントンは、彼が提唱する高等教育の学費無料化政策を採用した。クリントンは当初、学生の負担減のための別の政策を掲げ、サンダースの学費無料化政策に対しては、例えばドナルド・トランプの子どもたちのように「裕福な家庭の子どもたちにも税金を使って無料の教育を受けさせることになる」として一蹴してきた。

サンダース式教育プランを採用したクリントンの新たな政策方針では、一家の年収が12万5千ドルまでの家庭の子どもたち、つまりアメリカの8割以上の家庭が対象となる。恐らく当初は年収8万5千ドル以下の家庭を対象とし、2021年までに段階的に12万5千ドルまで拡大していくものと思われる。ライバルだったサンダースの大胆な「政治革命」を採用したクリントンの柔軟な姿勢を、サンダースは「革命的な前進」として高く評価した。

Translation by Smokva Tokyo

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