ザ・ビートルズ『リボルバー』についてあなたが知らない15のこと

8. 『シー・セッド・シー・セッド』はもともと『ヒー・セッド・ヒー・セッド』だった

レノンが死について書いたズキズキくるこの曲は、『シー・セッド・シー・セッド』になる前には『ヒー・セッド・ヒー・セッド』と呼ばれていた。というのも、文字通り彼が言ったことについての曲だからである。彼というのはピーター・フォンダのことで、フォンダはLSDでトリップしながら、あの世を経験した話をして、レノンを完全にびびらせていたのだった。

問題の夜は1965年8月24日、ビートルズは北米ツアー中の休日で、ビヴァリーヒルズでフォンダやザ・バーズとパーティーに興じていた。

フォンダはローリングストーン誌にこう書いている。「彼らは机の下に隠れている女の子を見つけたりして、雰囲気は完全にぶっ飛んでいた。ビリヤード場に窓から忍び込むと、LSDを決めたリンゴはキューを逆さまに持ってビリヤードをしていた」

子どもの頃フォンダは、銃で撃たれて死にかけたことがあった。彼はその傷跡をビートルズのメンバーに見せると言い張った。ジョージ・ハリスンはウンザリし、レノンはもう黙ってくれと言っていた。ケンウッドに戻ったレノンは、1人でアコースティックギターで繰り返し次のように歌った曲を録音した。「彼は言った。死がどんなものか、僕は知っているよ。そして僕は言った・・・」。この曲は『リボルバー』で最後に録音された楽曲になった。

9. 『エリナー・リグビー』に登場するマッケンジー神父は、マッカートニー神父になっていたかもしれなかった

ジョン・レノンの親友にピート・ショットンがいる。レノンはリヴァプール時代からショットンと一緒に育ち、後にスーパーマーケットまで買い与え、作曲のセッションにまで招き入れる間柄だった。ある時ケンウッドでそんな機会があった。ビートルズメンバーはみな、恋人を連れてやってきていた。

夕食が済むと、男たちはレノンの自宅スタジオに向かった。レノンはみんなが見ていたテレビ番組に退屈しきっていた。「そんなクソみたいなものは放っておけよ」とレノンが言っていたと、ショットンは著書『The Beatles, Lennon and Me』で語っている。

「いつものように自分のギターを持ちこんでいたポール・マッカートニーは、それを取り出すとかき鳴らし始めた」。ポールはみんなに新曲を聞かせた。それがたまたま、『エリナー・リグビー』だったのだ。

曲に出てくる牧師のもともとの名前は、マッカートニー神父だった。「ちょっと待てよ、ポール」とショットンが口を挟んだ。「これだとみんなが、キミの気の毒なお父さんの話だと思うんじゃないか。リヴァプールにたった1人で取り残されて、靴下の穴を縫い合わせているあのお父さんをさ」。もっともだった。みんなが口々に代わりの神父の名前を言い出したが、最後はショットンの提案したマッケンジー神父という名前と、この神父が夫に先立たれたリグビー夫人のために葬式を担当するという背景アイデアが採用されることとなった。

「お前にオレたちのやろうとしていることが分かるわけがないだろう」とレノンが評論すると、ショットンは「ファックユー、ジョン」と答えたのだった。

10. マッカートニーは『フォー・ノー・ワン』のフレンチ・ホルン奏者と一触即発だった

ビートルズの活動に参加することの悲しい側面に、ビートルズのアルバムに1度でも登場したなら、他に何をしても目立たなくなってしまう可能性があるということがある。ビートルズファンは、マッカートニーの名作『フォー・ノー・ワン』でフレンチ・ホルンを吹いていたアラン・シヴィルの名前を知っている。しかし、この音楽家の実績はそれにとどまらない。

シヴィルはクラシックの世界では十分に認められており、最終的には大英帝国勲位(OBE)を授与されている。後に『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』のオーケストラ演奏のクライマックスにも登場しているが、本来は特にモーツァルト作品のマスターである。そしてシヴィルは、危うくポール・マッカートニーと衝突寸前となった人物でもある。

「ポールは、アラン・シヴィルがどれほど素晴らしい仕事をしてくれたのか、分かっていなかった」とジョージ・マーティンは語っている。「完璧な演奏の後、ポールがこう言ったんだ。”オーケー、もうちょっとうまくできるよね、ねえアラン?”。アランは爆発寸前だった。もちろん、彼はやり直しはしなかったし、その時我々が聴いた演奏を、今あなたが聞いているわけだ」

マーク・ルーイスン著『ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版』で語るシヴィルは、如才ない大人のコメントを残している。「私にとっては、ある1日の仕事にすぎないよ。実際にはあの日3つ目のセッションだったんだがね。まあ、非常に楽しかったよ」。そうでしょうとも。

Translation by Kuniaki Takahashi

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