「裸のトランプ像」を仕掛けた無政府主義者のアーティスト集団とは?

米国内5都市にトランプの裸像が設置された(Photograph by Jason Goodrich)

これは、活動家団体インディクラインが起こした最初のアクションではなかった――そして、これが最後ではないだろう。スポークスパーソンが計画の全貌を語る。

2016年8月18日東部時間午前11時直前。シアトル、ニューヨーク、サンフランシスコ、クリーブランド、そしてロサンゼルスの5都市に散らばっていた約40人が、所定の場所に到着した。一般市民を驚愕させ、そして際限なく楽しませる、共和党の大統領候補への芸術的抗議を成し遂げるために。彼らは、なすべきことを的確に実行した。数人のメンバーが、この巨大なドナルド・トランプの裸像を設置してから警察が駆け付けて撤去しようとする避けられない瞬間の対応までのマニュアル作成にあたる一方で、他のメンバーは、このグロテスクなナニを本当におっ立てようとしていた。各都市で午前11時(西海岸では午前8時)きっかりに、建設作業員の格好をした2人が、ブルー・シートに包まれた高さ6フィート5インチ(約196センチメートル)、重さ80ポンド(約36.2キログラム)の物体を運び出し、地面の塵を払い、速乾性の業務用エポキシ接着剤を薄く広げると、あっという間にその物体を直立させて、押し寄せる人波の中へ消えて行った。

各地で、抗議活動はつつがなく進行した。「ひとつ、我々が予想できたのは、トラップが成功すれば大騒ぎになるので、立ち去るのが実際は一番簡単なパートだろうということでした」と、この『タマ無しの王様(Emperor Has No Balls)』と題した裸像を仕掛けた無政府主義者の集団"インディクライン"のスポークスパーソンは話す。彼の電話は鳴りっぱなしだ。裸像の仕掛人がインディクラインだと判明し、インタヴューの依頼が殺到しているのだ。活動を開始して15年、インディクラインがこだわってきたのは、昨秋、移民についてのトランプのコメントを受け、アメリカとメキシコの国境フェンスに「トランプをレイプしろ」とペンキで書いたように、主に落書きや壁画だった。しかし、2016年、ドナルド・トランプが(インディクラインが言うところの)「バカクソ野郎」から恐ろしいことに大統領になる可能性が現実に出てきたことで、さらにショッキングな手段を打つ必要があると気付いた。そこで、彼らはミシガン州フリントで計画していた高濃度の鉛汚染への抗議活動を中止し、全国規模の反トランプ活動に集中した。


アーティストのジンジャーが、型から取り出された像の一体一体にハンドペイントを施した。(Photograph by Jason Goodrich)

「歴史を通して、独裁者や専制君主がどのように像の形で記念されているか、我々は思い巡らすようになりました」と、訴訟を起こされないよう匿名を希望するスポークスパーソンは話す。「アメリカの大きな公園に行けば、剣を持った立派な白人の大将の像に出くわします。そういう輩は、その昔、ひどいクソ野郎だったんじゃないかな。古くはカリギュラからレーニンまで、像のことばかり考えていた。そして、トランプはそいつとピッタリ一致しました」

Translation by Naoko Nozawa

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