原子力問題で死刑に処せられた二人を歌った、ボブ・ディランの80年代の未発表曲とは

この事件は過去60年間、熱く語り継がれてきており、いまだに決定的な解は見いだされてない。ただ最低限、ジュリアスが少なくとも核関係の極秘情報を提供しようとしていたという点で多くの人が合意している。本当の真実はおそらく明かされることはあるまい。この曲についていえば、これはディランの最高の一曲からはほど遠い。80年代作品の基準に即してもそうである。彼がこの曲を編集スタジオの床にうち捨てておいたのは賢明であった(ディランは傑作『ブラインド・ウィリー・マクテル』も『インフィデル』から外しているが、それはまた別の話である)。

闇の業者がどうにかして『インフィデル』のセッションに関わることがなければ、誰も『ジュリアスとエセル』を耳にすることはなかっただろう。この曲は、『ハリケーン』『ジョーイー』『ジョージ・ジャクソン』『ハッティ・キャロルの寂しい死』に並んで、ディランが有名な歴史的事件に自ら分け入り、それなりに多くの人を怒らせることは間違いないような結論を描き出してみせる楽曲の仲間に入りを果たしている。

Translation by Kuniaki Takahashi

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE