レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのティム、新バンドのウォクラットについて語る

─『Sober Addiction』についてもっと詳しく教えてください。この歌詞はどういう意味なのでしょうか?

うーん、実はすごくシンプルなことさ。俺が考えるしらふ中毒(Sober Addiction)っていうのは、人生でチャンスを無条件に拒否してしまう俺の性格のことなんだ。「くそっ、何でああしなかったんだ?」みたいなね。学生時代やレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに入った時とか、俺がそれについて何を考えてきたのか、詳しく教えることはできないけどね。「くそっ、あの時何でああ言わなかったんだ? あの時何でああしなかったんだ?」とか思うのに、いつもノーと言ってしまった。ノーと言うのが当たり前だった。俺だけじゃなくて、皆もそうだと思う。そのせいで、怖くなってチャンスを逃してしまう。「これをしたいのか? やりたいだろ」って。この前、ラジオ番組『ジョーンジーズ・ジュークボックス』で、俺が大好きなバンド、セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズと一緒にスタジオに入った時もそうだった。俺が「いつもカラオケでセックス・ピストルズを歌っています」って言ったら、(イギリス訛りを真似しながら)彼が「1曲歌いたいか?」って言ってくれたんだ。俺は「もちろん!」って返事をしたけど、心の中では「いや、結構です」って言いたがっていた。この歌はそういう話なんだ。今日に至るまで俺を悩ませ続けてきたしらふ中毒についての歌さ。挑戦すべきでイエスと言うべきだったのに、ノーと言ってしまったいろんなことについて歌っている。他のことを試してみて、違うことをやっていたら、今の俺は何をしているんだろう?

高校時代にフットボールじゃなくて水球をしていたかもしれない。水球をやってスタンフォードに行ったアーバイン出身の友人たちのように、俺もスタンフォードに行っていたかもね。

─もしかしたら、リオに行っていたかもしれないですね。

絶対レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに入ってないし、リオに行っていたかもね。水球チームのキャプテンだったかも(笑)。手もでかいし。

子供の頃は水泳をやっていたけど、兄がフットボール選手だったから、俺もフットボールをやったんだ。コーチ陣も「コマーフォード、フットボールをやれ」って感じだったよ。ポップワーナーでのポジションはタイト・エンドだったから、高校でもタイト・エンドをやっていたら、良い結果を出せただろう。でも、兄がディフェンス・タックルだったから、俺も守備側のディフェンシブ・エンドをやることになった。皆に「俺はタイト・エンドだったんだ」って言ったことはなかった。あと、水球のコーチからは、「コマーフォード、お前は泳いだ方が良い」って言われた。あの頃はずっと泳いでいたね。彼は「お前の手はでかい。お前は水球のスター選手になれる」って言っていたよ。でもそうしなかった。フットボールにしたんだ。分かっただろう? 俺が歩んできた人生はこんな感じで、日々「何でああしたんだ?」って疑問を抱いている。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに入った出来事についての話じゃないけど。でも、あの頃ノーと言ってしまったけど、言いたかったことがたくさんあった。


1996年のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのティム・コマーフォードとザック・デ・ラ・ロッチャ。「レイジの頃、俺たちはメディアに出なかった。電話インタヴューとか絶対いやだったね」とベーシストは語る。(Photo by Tim Mosenfelder/Getty)

─レイジの時にこうすれば良かったのにと思っていることはありますか?

うーん。レイジの頃、俺たちはメディアに出なかった。電話インタヴューとか絶対あり得なかったよ。そういうことはやらなかったし、やりたくなかった。クールじゃないと思っていたんだよね。単に怖がっていただけなのかどうかは分からないけど。とにかくやらなかった。振り返ってみると、やればよかったなって思う。するべきだったかどうかだけじゃなくて、自分の意見を述べて、皆にそうしろと説得してみるべきだったんだ。トムやチャックDと一緒にこういうインタヴューを何度かやったけど、チャックDとザックはよく似ている。政治的な考え方も似ているし、ふたりともすごく頭が切れる。正真正銘、独学で学んだ頭の良い人たちだね。計画的かつ知的で学識あるトムのインタヴューを聞くのも、チャックの話を聞くのもすごく楽しい。チャックは衝動的に話をして準備もまったくしないけど、自分の気持ちを伝えることやその伝え方がとても上手いから、ふたりのインタヴューに同席するのはいいものだね。この前、「ああ、くそっ。同じことだったんだ」って思ったよ。ザックとトムのいるレイジは、いい感じでお互いに補完し合っていて、いつもこう言っていた。「これをやってみようぜ。ノー、やらないって言わずに、イエスと言ってやってみるんだ」って。

─この曲で、「俺のバンドにパンクロッカーはいない」というフレーズがありますが、どちらのバンドについて言及しているのでしょうか?

まあ、レイジのことだね。例えば、「音楽史上最高のパンク・バンド10組は?」っていう、パンクの歴史について話題にされる時とか。そういうリストにレイジが載っているのは見たことがない。レイジはパンク・バンドだから、「でたらめなリストだな」っていつも思っている。俺たちはパンク・バンドだったし、俺たちの信念はパンクだった。俺たちは誰かに望まれたことをやったことはない。自分たちがやりたいことだけをやってきたし、それがパンクロックの本質だろ。「俺のバンドにパンクロッカーはいない」っていうフレーズはそういう自分たちに対する賛辞みたいなものだよ。それだけさ。

─ツアーの話に戻りますが、あなたがライヴでふたつのバンドのかけ持ちをしたことは一度もありません。ですが、本質的にまだ実態の分からないこういう好戦的でエネルギッシュなバンドの考え方から始まり、アリーナを満員にするほどのファンを擁し、20年の歴史を持つ人気バンドのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの楽曲を演奏するのはどんな感じなのでしょうか?

まあ、リハーサルでの経験談しか話せないけど。まだ実際にツアーは始まっていないから。でも、このふたつのバンドはいろんな部分で皆が交わり、関係し合っていると思う。決してお互いに踏みつけ合うこともないし。ウォクラットは精神的で個人的な試練みたいなものだと思っている。歌詞もリアルな内容で、俺自身が書いたものだし、自分にとっても意味があるものだ。プロフェッツ・オブ・レイジやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンでは作詞担当ではないから、全然違うよ。

俺はそもそもベーシストであって、これらのバンドが交わって、両方のバンドで自分がやっていることをとても誇りに思っている。でも、さっきも言ったように、プロフェッツ・オブ・レイジはもっと身体的な試練で、よりエアロビックかつ音楽的なプロジェクトで、ベーシストとして参加しているものだ。一方、ウォクラットはもっと頭や心に精神的なプレッシャーがかかるプロジェクトさ。違うものだから、どんな結果になるのか楽しみだよ。

ツアーにはあらゆる世代の人たちが来ると思う。親に連れて来られた幼い子供から大人までいろんな観客が来るだろう。「自分の子供を連れて行こう。『Killing in the name』について教えてあげたから、子供たちは乱暴な言葉を聞く準備ができている。対処できるはずだ」と思っているような人たちがたくさん来るんじゃないかと思っている。でも、ウォクラットがやろうとしていることを見る準備ができているとは思えない。俺たちの音楽はハードだろ。俺はそうだと思っている。それに、俺はずっとそういうバンドをやってみたいと思っていた。ザックと俺は小学校に通っていたまだ幼い頃に知り合ったんだ。俺たちは思い切り楽しんで、ザックがギターを弾いて、一緒にセックス・ピストルズのアルバム『勝手にしやがれ!!』の曲を演奏したりしていた。Fワードがたくさん出てくる『ボディーズ』って曲があるけど、あれを演奏する時が一番楽しかったな。俺はいつも「こんな感じのバンドをやりたい」って思っていた。だから、『Killing in the name』が大好きさ。俺は怖がるのが大嫌いだけど、歌詞では、怖がるのはすごく簡単だ。女の子やドラッグとかバカなことについて歌うのもすごく簡単だし、俺はただ腹を立てたり、正直でいる方が好きだから。(ウォクラットの)歌詞もまさにそうで、俺みたいなタイプの人について歌っている。俺はハッピーな歌が嫌いだし、マイナー・コードを好むタイプさ。中指を使うのも好きだしね(笑)。

Translation by Shizuka De Luca

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