映画『世界一キライなあなたに』: 四肢麻痺の患者を介護し、そして恋に落ちる感涙ストーリー

映画『世界一キライなあなたに』のエミリア・クラークとサム・クラフリン photo by Alex Bailey/Warner Bros. Pictures

エミリア・クラークが、四肢麻痺の患者を介護し、そして恋に落ちる感涙ストーリー。

前世紀の『ある愛の詩』からミレニアル世代の『きっと、星のせいじゃない。』のような作品まで、またニコラス・スパークスのあらゆる作品も含めて、涙腺崩壊系の映画において、死とは究極の媚薬である。ただ、『世界一キライなあなたに』には注意してほしい。ジョジョ・モイーズの2012年のベストセラー小説を映画化したこの作品を、私は多くの女性たちに囲まれて鑑賞したが、彼女たちは泣いたり笑ったりを繰り返していた。観客の中にいた少数の男性たちは平然と腰かけ、この映画を見ることになった運命を甘んじて受け入れていたようだが、もしかすると感情を押し殺していたのかもしれない。驚いたことに、『世界一キライなあなたに』は過酷な忍耐力テストではないのだ。

これは、絶望的な恋人同士を演じた、魅力溢れる2人の役者によるところが大きい。エミリア・クラークは、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場するドラゴンの母である、ブロンドのカリーシ役で最もよく知られている。しかし、本作で彼女が演じるのは、騒々しい労働者階級のイギリス人家庭で育った、ブルネットヘアの平凡な女性ルイーザ・"ルー"・クラークだ。ルーは、四肢麻痺を患う上流階級のウィル・トレイナーの介護を務めることになる。ウィルを愛嬌たっぷりに演じるのは、『ハンガー・ゲーム』シリーズのサム・クラフリン。ロンドンに住むウィルは、信じられないほどハンサムな実業家で、2年前にバイクの事故で麻痺を負い、映画『プロポーズ』のように独身を謳歌できたかもしれないそれまでの生活が一変した。彼の裕福な家族は、ルーの質素な住まいがある丘のすぐそばに、城を所有している。

おしゃべり好きで、えくぼのあるルー。ファッショニスタを卒倒させるかもしれない、ミニー・マウスや水玉模様がワードローブの彼女が、スイスの病院でウィルの母(控えめで素晴らしい演技のジャネット・マクティア)に思いがけなく採用される。自殺ほう助を願う息子の気を紛らわすためだ。1991年の陰鬱な映画『愛の選択』で、キャンベル・スコットに生きる気力を取り戻させようと微笑んだジュリア・ロバーツ以来、女優がマンガの死神のごとく狂気的に歯をむき出して笑うことはなかった。しかし、ここでクラークはそれを体現して見せる。人工甘味料的な役柄に、自然な温もりとユーモアをにじませながら。

Translation by Sayaka Honma

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE