映画『われらが背きし者』:ジョン・ル・カレ原作のサスペンスフルな亡命劇

夫婦は旅先のモロッコ・マラケシュでディマ一家と出会い、組織に命を狙われた一家の亡命をヘクターと共に手伝うという使命を負う。この仕掛けはまるでヒッチコック映画のようで、『知りすぎていた男』(1956)のジェームズ・ステュアートとドリス・デイが演じた夫婦像に類似している。しかし、ホワイト監督に巨匠ヒッチコックほどの技量はまだなく、その場違いな夫婦のドラマがうまく機能していないのだ。


(C) STUDIOCANAL S.A. 2015

そこで、ディマとヘクターによるいたちごっこが、息もつかせぬサスペンスで観客を引っ張る。さらに、私的な感情を押さえ込むことで生き延びる術を身につけた二人の危険な男の人間性も垣間見えて興味深い。終盤、ルイス(TVドラマ『ホームランド』『ビリオンズ』『ウルフ・ホール』での芝居は素晴らしい)は静かに皮肉たっぷりに、物語を締めくくる。



映画『われらが背きし者』
監督:スザンナ・ホワイト
出演:ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス、ナオミ・ハリスほか
10月21日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
http://wareragasomukishimono-movie.jp/

Translation by Sahoko Yamazaki

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