映画『われらが背きし者』:ジョン・ル・カレ原作のサスペンスフルな亡命劇

(C) STUDIOCANAL S.A. 2015

二人の観光客が、偶然出会ったロシア・マフィアの亡命劇に巻き込まれる、ジョン・ル・カレ原作のサスペンス映画『われらが背きし者』。

もしもあなたが、ジョン・ル・カレの小説をトム・ヒドルストンとヒュー・ローリー共演でドラマ化した『ナイト・マネジャー』を見ているなら、映画『われらが背きし者』の公開も心待ちにしていることだろう。悲しいことに、本作はそこまで魅力的な作品ではない。とはいえ、スザンナ・ホワイト監督と『ドライヴ』で知られる脚本家ホセイン・アミニによる機転の効いた脚本によって、遊び心のある洗練された映画に仕上がっている。


左:ステラン・スカルスガルド 右:ダミアン・ルイス (C) STUDIOCANAL S.A. 2015

本作には、二人の素晴らしい役者が登場する。まず、組織を裏切って亡命しようとするロシア・マフィアのディマ役、ステラン・スカルスガルド。そしてもう一人は、ディマと彼の家族の命を救いながら、私的な復讐の炎を静かに燃やす英国諜報員(MI6工作員)、ヘクター役のダミアン・ルイス。

残念な点は、ある一組のカップルの物語が主軸となっているため、その分スカルスガルドとルイスの出番が少ないことだ。あるカップルとは、大学教授のペリー(ユアン・マクレガー)と、法廷弁護士の妻ゲイル(ナオミ・ハリス)の夫婦。二人を非難するわけではないが(二人とも素晴らしい役者である)、この夫婦の物語にはあまり面白みを感じない。二人は、ペリーが学生と浮気したことで傷ついてしまった夫婦関係を修復しようと旅行に出かけた。

Translation by Sahoko Yamazaki

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