レッチリ、『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』の知られざる10の真実

8. 『アイ・クド・ハヴ・ライド』は、アンソニーがシネイド・オコナーとのつかの間の恋を書いた曲である。

色男として悪名高いアンソニーには、当時ロサンゼルスに住んでいたアイルランド人シンガー・ソングライターのシネイド・オコナーとの短期間交際で、傷心した過去がある。『スカー・ティッシュ─アンソニー・キーディス自伝』には、「ドライブして音楽を聴いて、キスとかその他いろいろとした」と綴られている。「でも言ってみれば、彼女はドアの向こうまで俺を入れてくれてたわけではなかった。性的な意味だけではなくて」。それでもアンソニーは、シネイドとの恋を「今までで一番最高な性的関係のない恋愛」と感じていたという。しかし突然、留守番電話で別れを告げられたアンソニーは、完全に打ちひしがれてしまった。シネイドの留守番電話への返答として、アンソニーとジョンは徹夜で『アイ・クド・ハヴ・ライド』を書き上げた。その翌朝、アンソニーはシネイドの郵便受けにそのテープを入れたが、彼女からの連絡は一切なく、二人は数年後に授賞式で気まずい再会を果たしている。心を痛めたアンソニーではあったが、「もしかしたら、彼女は結局、俺のためにやってくれたのかもしれない」と綴っている。「ああいう苦しみは、誰が必要とするだろうか?」

9. BSSMは当初、2枚組アルバムとなる予定だった。

BSSMセッションでレッチリがレコーディングした曲数は、25曲か27曲のどちらかだとされているが、最終的にアルバムに収録されたのは17曲だけだった。ジェフ・アプター著『Fornication: The Red Hot Chili Peppers Story 』には、2枚組でのリリースを希望したリック・ルービンの、「そのフォーマットの方が、より消化しやすかっただろう」という言葉がある。しかしワーナーブラザーズは、値段が高くなる2枚組アルバムは、潜在的な消費者を遠ざけるのではないかと賢く判断し、1枚組でのリリースにこだわった。BSSMからのアウトテイク数曲(『シカミカニコ』、『ソウル・トゥ・スクイーズ』、インストゥルメンタルな『フェラズ・コック』、 イギー・ポップ&ストゥージズのカヴァー『サーチ・アンド・デストロイ』)は、後にCDのB面や映画のサウンドトラックとしてリリースされている。

10. 『ブレーキング・ザ・ガール』がBSSMツアーで披露されたのは、1回だけである。

6/8拍子で、12弦ギターのサウンドが鳴り響き、メロトロンでオーバーダブされた優美な『ブレーキング・ザ・ガール』は、レッチリのカタログの中で非常に珍しい一曲であるが、そのことで92年にラジオとMTVで大ヒットしないわけはなかった。しかし、ライヴとなると別の話だったようだ。レッチリが同曲をBSSMツアー中に披露したのは、91年10月16日のウィスコンシン州マディソンでの初日公演のみで、その後はツアーのセットリストにこの曲が加わることはなかった。「『ブレーキング・ザ・ガール』に挑戦したけど、めちゃくちゃだった」。こうアンソニーは、自伝に綴っている。「それでも、残りのステージはうまくいった」。(同公演の海賊版音源からは、メンバーの誰よりもアンソニーがこの曲に苦労した様子が伺える。)『ブレーキング・ザ・ガール』がレッチリのライヴで再び披露されたのは、2000年のことで、Setlist.fmによると、以降16回ほどライヴ演奏されているという。

Translation by Miori Aien

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