1970年代初期を代表する20曲

アル・グリーン 『レッツ・ステイ・トゥゲザー』(1972年)
(原題:Let’s Stay Together)


70年代にブームを起こしたソウル・ミュージックは、公民権運動時代に巷で流行ったダンス・ミュージックを圧倒した。南部の気概と洗練された上品さを、大胆かついとも簡単に調和させることができたのは、アル・グリーンを置いてほかにはいない。「君は僕にそんな仕打ちをしないよね?」と真剣に問いかけ、「そうだよね、ベイビー?」と念を押す。ハイ・リズム・セクションのノリのよいビートに乗せて即興で歌い上げたような曲を、プロデューサーのウィリー・ミッチェルがより磨きをかけて仕上げた。

ザ・ステイプル・シンガーズ 『アイル・テイク・ユー・ゼア』(1972年)
(原題:I’ll Take You There)


1ヴァース、2コードの約5分間の厳かなゴスペル・ソウル『アイル・テイク・ユー・ゼア』は、黒人教会音楽を白人たちの世界へも普及させることに貢献した。初期ジャマイカン・レゲエにも精通したマッスル・ショウルズ・リズムセクションが、さりげなく効果的にリズムを刻む。スタックス・レコードの共同経営者でもあったアル・ベルが歌詞を書き、ウェイラーズ・カールトン(ドラム)とアストン・“ファミリーマン”・バレット(ベース)によるリディムのリズム構成は、ザ・ハリー・J・オールスターズの1969年のレゲエ・ヒット曲『ザ・リキデイター(原題:The Liquidator)』にヒントを得ている。ロックステディのシンガー、アルトン・エリスは自曲『ガール・アイヴ・ガット・ア・デート(原題:Girl I’ve Got a Date)』からの盗用だと主張した。シャウトとソフトな歌声を巧みに使い分けるメイヴィス・ステイプルズの荘厳なコントラルトが、この曲のバックグラウンドとなった複雑な事情を忘れさせてくれる。「この曲は悪魔の音楽だと思う人も多かったの。なぜかって、この曲がかかると皆踊り出すから」と、彼女は後に語っている。

エルトン・ジョン 『ロケット・マン』(1972年)
(原題:Rocket Man)


『僕の歌は君の歌(原題:Your Song)』、『リーヴォンの生涯(原題:Levon)』、『可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)(原題:Tiny Dancer)』、『ダニエル(原題:Daniel)』、『ホンキー・キャット(原題:Honky Cat)』、『クロコダイル・ロック(原題:Crocodile Rock)』などをリリースした70年代初期以降は、エルトン・ジョンの時代となった。中でも『ロケット・マン』は本人がメガヒットを望んだ作品だった。トム・ラップがパールズ・ビフォア・スワインに提供した同名曲にインスパイアされ、バーニー・トーピンが歌詞を付けたこの曲は、自分の選んだ職業が夢に描いていたものとは程遠くがっかりした宇宙飛行士を描いている。(デヴィッド・ボウイの『スペース・オディティ(原題:Space Oddity)』はこれとは対称的にもっと芝居がかっている)。ニューオーリンズのポリリズムからニューエイジ・ヌードリングまで、目まぐるしく変わるステージでジョンは、この曲を発射台として使っているのだと思う。

Translation by Smokva Tokyo

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