写真で見るロックの歴史:伝説の写真家、ハリー・ベンソンが語る歴史的瞬間の数々


Photograph by @HarryBenson
ザ・ビートルズ
1964年 フランス パリ

ポールとジョンが並んでピアノの前に座って、『アイ・フィール・ファイン』を演奏しているところ。手持ち無沙汰だったリンゴは、木の棒と机を叩いてた。彼はいつもどこか可笑しかったよ。

ジョンのことは好きだったよ。彼には複雑な面もあったけど、それも含めて僕は彼に好感を持ってた。彼には気取ったところがなかったからね。僕を見かけると、向こうから近づいてきて声をかけてくれたよ。セレブレティの中には「俺に話しかけるんじゃねぇ」みたいな傲慢な人も多いけど、彼はそうじゃなかった。今でもすごく印象に残っていることがあるんだ。彼らはエド・サリヴァン・ショーに出るためにニューヨークに来ていて、ニューアーク空港で車に飛び乗った。ファンに囲まれて身動きが取れなくなっていた僕を目にしたジョンは、ドアを開けてこう言ってくれたんだ。「来いよハリー!君は僕らの一員だ」あれは嬉しかったね。あの時彼が僕に気づいていなかったら、僕は置いてけぼりにされていたかもしれない。ジョンはいつだって周囲の人々に対する思いやりを忘れなかった。


Photograph by @HarryBenson
ザ・ビートルズ
1964年 フランス パリ

この日、彼らがアメリカのチャートでトップを飾ったっていうニュースが入ったんだ。ビートルズが世界的なブレイクを果たした瞬間と言ってもいいかもしれない。僕らはパリにいて、ポールかジョンの取材目的のメディアがひっきりなしにやって来てた。中にはジョージにインタビューする人もいたけど、30分っていう限られた時間内にリンゴの取材を希望する編集者はほとんどいなかった。僕はジョンと大学の同級生だった当時のマネージャーの1人とよく話してたんだけど、ジョンが取材に応じていた時に、彼はこう言ったんだ。「ビートルズのリーダーが誰かは一目瞭然だね」確かにジョンは口達者で、ユーモアのセンスを披露することも忘れなかった。でもその翌日、別のメディアの取材に応じていたポールを目にして、彼は僕にこう言ったんだ。「どうやら僕は間違ってたみたいだ。このバンドのリーダーはポールだ」2人ともそれだけ風格があったってことだよ。でも僕に言わせれば、ビートルズの真のリーダーはポールだ。この写真を特別にしているのも、やっぱり枕を高く掲げたポールだ。彼はショービジネスのルールを理解した上で、その世界を楽しんでいた。ジョンとは対照的にね。

Translation by Masaaki Yoshida

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