トランプ次期大統領記者会見:自らのビジネスとの利益相反問題に関して国民を欺くのか

2017年1月11日(現地時間)トランプ・タワーにて行われた 、トランプ次期大統領の記者会見(Photo by Spencer Platt/Getty Images)

トランプ次期大統領による2017年1月11日(米現地時間)の記者会見で、大統領在職中もビジネスに手を出し、自分のビジネスとの利益相反を起こすことが明らかになった。「私は自分のビジネスも政府も同時に運営しようと思えばできる」と発言。

2017年1月11日(現地時間)、トランプ次期大統領は記者会見で気を吐いた。会見の中でトランプは、メディア企業BuzzFeedの報道を"間違いだらけのゴミの山"と攻撃した。BuzzFeedは、大統領選期間中のトランプ陣営とロシアの独裁者ウラジーミル・プーチンとの"巧妙に仕組まれた共謀"に関する機密文書を暴露していた。そしてトランプはついに、大統領在職中は自らが経営するトランプ・オーガナイゼーションと距離を置くことを明言した。

記者会見の冒頭でトランプ次期大統領の報道官となるショーン・スパイサーは、西側の元諜報部員によってもたらされたというトランプとプーチンに関する機密文書について、"低俗で全く誤った情報"として激しく非難した。トランプは文書について"ナンセンスな誤報"とし、さらに「プーチンがドナルド・トランプを好きだと言うなら、それは負債ではなく資産であると考えるべきだ」と他人事として表現した。

会見で注目すべきは、トランプの法律顧問によるトランプ・オーガナイゼーションの今後に関するプレゼンテーションだった。選挙期間中トランプは、「自分のビジネスとの利益相反は起こさない」と約束していた。また選挙後には、「大統領在職中は彼の会社は新たな取引を行わない」とツイートしている。

11日の記者会見で、トランプのこれらの公約が嘘であると国民は知ることになった。

トランプは勝者の原理に基づいてこの公約違反となる仕組みを考えだした。「大統領は利益相反を禁じる法律の対象ではない」とトランプは主張する。「私は、自分のビジネスも政府も同時に運営しようと思えばできるのだ」とトランプは言う。

トランプの法律顧問によると、トランプは会社役員のポストを辞し、彼の行ってきたビジネスの日々の業務をドン・ジュニアとエリックのふたりの息子に引き継ぐという。これは"利益相反の回避"とは程遠い。トランプのふたりの息子は、トランプ・タワーで次期大統領が主催したテック・サミットを含む政権移行のためのトップレベルのミーティングにも出席している。記者会見でトランプは「彼らと今後ビジネスの話はしない」と言っている。しかしトランプの法律顧問によると、次期大統領は今後も会社の業績に関する資料を受け取るという。

「トランプ・オーガナイゼーションは今後"新たな海外取引"は行わない」と宣言したものの、これが海外でのプロジェクトに関するものなのか、外資によるプロジェクトも含むのかはっきりしない。選挙前のトランプの公約に反した"新たな国内取引"が動き出しそうだ。トランプの法律顧問によると、今後は倫理担当顧問が"利益相反や倫理問題"について厳しくチェックするという。ただし、この倫理担当顧問はトランプ一族によって雇われている。

法律違反が疑われる、トランプの経営するホテルに外国の政府関係者を宿泊させて収入を得ている件について、トランプの法律顧問はこの日最も奇妙な発表を行った。「トランプ次期大統領は、彼の経営するホテルへの外国政府による支払いから得た全ての利益を、自発的に合衆国財務省へ寄付することを決定しました。これにより、(トランプ個人でなく)アメリカ国民が利益を得ることになります」と法律顧問は述べた。しかし、ゴルフコースやカジノの利用、不動産の売却やリースによって外国政府から得た報酬または贈与と解釈されるその他収入の処理方法の詳細に関しては語られなかった。

トランプの法律顧問は、「これらの対応により、トランプ次期大統領とトランプ・オーガナイゼーションは切り離される」と主張したが、彼女が会見で述べたその他多くの方針とは矛盾が見られる。

政府の倫理行動を監視する人たちの目はごまかせない。

ワシントンの市民団体CREW(Citizens for Ethics and Responsibility in Washington)の理事ノア・ブックバインダーは、トランプが所持し続け、自分の子供たちに運営させるビジネスとの利益相反は起こらないとするトランプの主張を、"道理に反したバカげた考え"であると切り捨てた。

「ドナルド・トランプが大規模な利益相反を回避する唯一の方法は、彼の持つビジネスの全てを家族以外へ売却し、資産を完全に白紙委任とすることである」とブックバインダーは主張する。さらに、「トランプは、過去の大統領が踏襲してきた倫理基準を外れている。これはトランプ政権に長期的な悪影響を及ぼすだろう。今後トランプの下す決断には必ず疑問が付きまとい、"その決断は本当に国民のために最善のものか"或いは"彼自身の利益にとって最善のものか"という疑惑の目が向けられるようになる」と語った。

CREWの創設者でブルッキングス研究所のフェローであるノーム・アイゼンは、トランプの計画は大統領の倫理からも法律からも"あらゆる観点において"欠陥だらけだという。「トランプの思慮に欠けた方針は、今後のスキャンダルや腐敗の要因となるだろう」。

Translation by Smokva Tokyo

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE