全文翻訳|オバマ大統領、最後のスピーチ

(Photographer: Christopher Dilts/Bloomberg via Getty Images)

1月10日(米国時間)シカゴにて、バラク・オバマが大統領として最後の感動的なスピーチを行い、心に響く言葉で国民の強い結束を呼びかけた。オバマ大統領のお別れスピーチの全文翻訳をお届けする。

ただいま地元へ帰ってまいりました。アメリカ国民の皆さん、ミシェルと私は、この数週間に皆さんからいただいた温かいねぎらいの言葉に本当に感動しました。今夜は私の方から皆さんに感謝を述べさせていただきます。リビングや学校、農場や工場、ダイナーや遠く海外の駐屯地など、あらゆる場所で国民の皆さんと直接語り合ってきました。時には意見が食い違うこともありました。皆さんの言葉は私にインスピレーションを与え、素直で前向きな気持ちにさせてくれました。皆さんが私を人間として成長させ、一人前の大統領に育ててくれたのです。

20代の初めにシカゴへ出てきた頃の私は、自己を確立しようともがきながら人生の目標を模索していました。私はまず、ここからほど近い場所にある閉鎖された製鋼工場の並ぶ一角で、教会関係の仕事に携わりました。この街で私は、信仰の力、そして困難や苦悩に立ち向かう労働者の静かなる威厳を目の当たりにしました。そして、普通の人々を積極的に呼び込んで参加させ、一緒になって声を上げた時に初めて"チェンジ"できるのだ、ということを学びました。

大統領になって8年、今もその考えは変わっていません。これは私の中だけにある考えではありません。アメリカ国民の心の中に息づく信念、即ち、自治における大胆な挑戦なのです。

人間は皆平等で、生命、自由、そして幸福の追求は神から授けられた永久の権利です。

そしてそれらの権利は当然、自然に行使されるものではありません。我々国民は民主主義という手段を使って、より理想的な連合体を形成できるのです。

これは神からの素晴らしい授かりものです。我々には、一人ひとりが想像力を働かせながら懸命に努力して夢を追求する自由と、力を合わせてより素晴らしい目標を達成する義務が与えられているのです。

建国から240年、我が国は国民に対して代々、仕事と目的を与えてきました。そのため愛国者は専制政治でなく共和制を選択し、開拓者は西を目指し、奴隷は見せかけの自由に勇敢に立ち向かいました。さらに移民や難民は海やリオ・グランデを渡って我が国を目指し、女性が参政権を獲得し、労働者に結束する力を与えたのです。そして兵士はオマハ・ビーチや硫黄島、イラクやアフガニスタンでの戦いに命を捧げ、公民権を求めたセルマでのデモや同性愛者の権利を掲げたストーンウォールの反乱に参加した男女も、命がけで行動を起こしました。

これこそがアメリカが特別だと言われる所以なのです。我が国は最初から完璧だった訳ではありません。しかし、国民の人生を豊かにするための"チェンジ"を受け入れるだけの度量があったのです。

アメリカの歩んできた道は平坦ではありませんでした。民主主義の推進には常に困難が伴い、議論が欠かせず、時には血が流れることもあります。2歩進んで1歩下がりながら進むのです。しかしこの国は常に前進することを求められているのです。広がり続ける建国の理念は、一部ではなく全ての国民に恩恵を与えています。

もし私が8年前、皆さんに「アメリカは大きく景気回復し、自動車産業を再興し、史上最大の雇用を創出する。また、キューバの人々との新たな1ページをスタートさせ、1発の銃弾も撃たずにイランの核開発を停止し、9.11の首謀者を排除する。さらに、より平等な婚姻関係を実現し、健康保険制度を利用できる国民を2000万人増加させる」と約束したとしたら、きっと「その目標は高すぎる」と言われたことでしょう。

Translation by Smokva Tokyo

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