セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズが語る:「俺たちは破滅する運命だった」

ーサンフランシスコでのショーの後、あなたとポール・クックは2人でブラジルを訪れていますが、彼が不要だと判断した理由は何だったのでしょうか?

『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』の撮影があったから、どっちにしろブラジルには行くつもりだった。ライドンは興味を示さなかったけど、俺とクッキーはノリ気だった。楽しそうだったし、俺はあの映画の制作を止めたくなかったんだ。

ー3ピースバンドとしてもやっていけると思っていましたか?

そんなことはないよ。ジョンなしで活動していくなんて誰も考えてなかった。映画じゃ俺たちがオーディションでシンガーを探してるように見えるけど、あれは(マルコム・)マクラーレンが考案したマーケティング戦略だよ。ジョン以外のシンガーを加入させる気なんてまったくなかった。そんなことをしてたら、セックス・ピストルズは完全に別のバンドになっちまってただろうね。

ーブラジルから戻ってから、あなたとライドンが次に話したのはいつでしたか?

何年も後のことじゃないかな。当時の俺はイカれちまってたから覚えてないよ。俺はあの頃からドラッグに手を出すようになったんだ。

ーその時点で、あなたはシドがドラッグ依存で苦しんでいたのを目にしていたと思います。そのことがあなたにドラッグの使用を思いとどまらせはしなかったのでしょうか?

まったくなかったな。考えたこともなかった。当時の俺にはヘロインが不可欠だった。「手を出しちゃダメだ、シドの二の舞になりたいのか?」そんな風に考えたことはまったくなかった。

ーシドは好戦的になることも多かったと言われています。あなたは自伝で、彼がバーの客によくグラスを投げつけていたと綴っていますが、彼が理由で身に危険を覚えたことはありましたか?

バンドでアメリカに来た時、俺とシドはよく一緒にカウボーイたちが集まるバーに足を運んでた。どういうわけかシドはカウボーイに目を付けられやすく、ことあるごとに喧嘩になってた。ある日テキサスかどこかのバーで、俺とシド、そして俺たちのボディガードの3人は喧嘩に巻き込まれた。俺はもうウンザリだと思った。俺にはシドがメディアの期待にわざわざ応えようとしているように思えた。「シド・ヴィシャスは筋金入りのワル」そういうイメージを地で行くかのようにね。

ーあなたはシドの死を悲しむことができるようになるまでに時間を要したと綴っています。彼のどんな部分を恋しく思いますか?

ユーモアのセンスだな。やつはスウィートなソウルの持ち主だった。あいつにはスターとしての資質があったと思うし、バンドに入ってなくても有名になってたんじゃないかな。世間はシド・ヴィシャスとしてのやつしか知らないだろうけど、実際には人々が知らないような才能も持ってた。あいつ自身、そんな自分を持て余していたのかもしれない。俺たちもそうだったけど、少なくともあいつよりは人生経験が豊富だったからな。

ージョン・ライドンは著書のひとつで、モーターヘッドのレミー・キルミスターはシドにベースを教えようとしていたと記しています。それについて覚えていることはありますか?

そんなこともあったのかもな。指の使い方は俺も教えたよ。最初は真剣な様子で、学ぼうとする姿勢を見せてたんだ。俺は抑えるべき指板にテープを貼ったりもしたけど、うまくいかなかった。誰かにベースの弾き方を教えるのはもうまっぴらだと思った俺は匙を投げ、やつは独学であの妙なプレイスタイルを身につけたんだ。

音源でやつにベースを弾かせなかったのは正解だった。もしそうしてたら酷いことになってたはずさ。『ボディーズ』の音程がずれてる部分はあいつだけどな。

Translation by Masaaki Yoshida

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