今年11月に64歳という若さでこの世を去ってしまった、マルコム・ヤング。唯一無二のハードロック・サウンドのど真ん中でドライブするリズム・ギターの絶妙なスウィングは、40年に渡ってAC/DCにパワーを与え続けた。
「ロックンロール・バンドはほとんどいないね」と、AC/DCのアルバム『スティッフ・アッパー・リップ』が発売された2000年頃、マルコム・ヤングがオランダのテレビ番組のインタビューで解説した。「ロック・バンドはいる。メタル・バンドもいる。それ以外のバンドもいる。でもロックンロール・バンドは……ローリング・ストーンズと俺たちだけだ」と言って、マルコムはクスクス笑った。インタビュアーからロック・バンドとロックンロール・バンドの違いを教えて欲しいれと言われ、彼はこう答えた。「ロック・バンドにはスウィングがない……たいていのロックは硬くて、しなやかさがないね。連中はフィールを理解していない。ムーブメントも知らない。そして、そういう数多が混在する世界だってこともわかっていない」
マルコムの言う「数多が混在する世界」を理解していたロックンローラーはほとんどいない。そして、そんな世界を永続させようと、一途に貢献したロックンローラーとなると、さらに数は少なくなる。1973年に弟アンガスと一緒にAC/DCを組んだマルコムは、認知症とその他の健康問題で2014年に早めのリタイアを余儀なくされたが、それまで頑なに維持してきたのが、威風堂々とスウィングしながらリフが推進する音楽だった。マルコム在籍中、AC/DCのレコーディングには3人のヴォーカリスト、3人のベーシスト、5人のドラマーが参加した。それにもかかわらず、AC/DCの音楽の美学は決してブレることなく維持された。彼らと比べると、ラモーンズですら気まぐれにトレンドを追いかけていたバンドに聞こえる。