LUNA SEA、INORANが考える「脇役の美学」とは

ギター好きの人に聞けばわかるが、“INORAN以前・以降”という言葉がある。LUNA SEAはご存知の通り、SUGIZOとINORANのツインギターだ。SUGIZOがいわゆるリードギターの立ち位置に対してINORANはサイドギターを担当している。ギターの華はやはりリードギターで、サイドギターがスポットライトを浴びることはなかった。ところが、INORANのLUNA SEAにおけるギタープレイがサイドギターの歴史を変えた。「I for you」などの曲に代表されるINORANの正確無比なクリアトーンのアルペジオ(通称INOぺジオ)は、LUNA SEAサウンドの要で、このサウンド、プレイに憧れたギターキッズたちがたくさん生まれた。

実はこのクリアトーンのアルペジオの奏法については何度か取材で聞いたことがあったが、INORAN自身から明確な発言を聞いたことがなかった。が、今回INORANが口を開いた。「例えば、他のバンドの誰かが弾くアルペジオを“これINORANぽくない?”って言われることがあるんですが、似てると思ったことは一切ないですね」と珍しく強い口調で言い切った。INORAN曰く、音には弾く人の性格などあらゆるものが含まれるという。例えば、INORAN自身の弱い部分がピッキングの弱さに表れていて、それが音に反映される。だから、仮にINORANのギター・スタッフが、同じ音色に設定して同じギターで弾いたとしても、INORANと同じ音は出せないと言い切る。さらに今回、INORANはアルペジオの技術的な解説もしてくれた。

「スーパースローで僕のアルペジオを再生すると、すごく変な弾き方をしてるんですよ。ピックのしなりとかも独特だし、独特のタイミングでピックを弾かないとあの音は出ないんです。だから、僕の弾き方をそのままマネしても再現できないと思いますね。

それは自信とかそういうことじゃなくて」と前置きして、大好きなタバコを例にこんなふうにまとめてくれた。

「だから仕草に近いんだと思う。例えば、タバコを吸う仕草。松田優作さんの喫煙姿ってかっこいいでしょ。同じ服を着て、同じ髪型にして、同じタバコを吸っても、優作さんと同じにはならない。タバコを吸うスピード、呼吸、持つ角度……それは本人しかできないことで、たとえ優作さんの子どもでも同じにはならないと思う」

それにしても、INORAN自身はリードギターを弾きたいという衝動に駆られることはないのだろうか? いくらサイドギターの美学があるとしてもだ。INORANにそんな素朴な疑問をぶつけてみた。「サイドギターは僕の性格に合っていたんです」とさらりと答えてくれた。

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Photo = Kentaro Kambe

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