マーク・ハミルが明かすルーク・スカイウォーカーの実像

ーあなたにとってルークはどういう存在なのでしょう?

MH ルークは僕よりはずっと利口だね。それでもルークはこれまでに何度も、極めて重要なことを見逃してしまっている。オビ・ワンとの出会いも、ヨーダとの出会いもそうだ。デス・スターからレイアを救出する際にも、彼の計画はお世辞にもよくできているとは言い難い。でも元祖『スター・ウォーズ』の台本を読んで、僕が自分自身を最もうまく重ね合わせることができたのは、実はあの場面だったんだよ。命がけで救出にやってきたルークを前に、レイアは「あんなのに乗るの?」なんて不満を口にする。あのシーンには親近感が湧くと思うんだ。10代の年頃の娘が父親の運転で学校まで送ってもらうときに、そのオンボロ車を人に見られたくないがために学校から結構離れたところで降ろしてもらうような、そういう親しみやすさがあると思う。人間的というかさ。ファンタジーの世界で繰り広げられる命がけの戦いの最中に、思わず顔をほころばせるユーモアが登場するっていうのがすごくいいと思った。レイアは「ろくでもない計画ね」と吐き捨てるように言って、銃を手に自身で軍の指揮を執りはじめる。あれこそまさにフェミニズムだよ。「私は哀れな囚われの王妃、どうか私を救って」なんていう典型的なお姫様のイメージとは対極にある。その時点で僕はまだキャリーのことを知らなかったけど、台本を読んだだけですっかりその気になったよ。

ルークはすごくストレートなキャラクターだと思う。登場するロボットたちみたいに物事を深く考えず、人間味に欠けるようにさえ思えることもある。ロボットたちが失敗の責任を互いになすりつけようとする場面、僕はあれが大好きなんだ。撮影オーディンションの場で、「これって何か元ネタがあるのかな?」って僕が聞くと、ジョージはこう答えた。「とりあえず撮ろう、後で教えるよ」でもそれは常套句みたいなもので、実際は「そのことは口にするな」っていう意味だってことを、僕は後になって理解したんだ。だから『アメリカン・グラフィティ』に出てたハリソンから、それがメル・ブルックスへのオマージュだって教えてもらったときは驚いたよ。「こんな奇妙な話し方はあれしかないだろ」ってね。


『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年) でのアレック・ギネスとマーク・ハミル (Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images)

それに、ハリソンは常に主役のイメージだし、僕は脚本を読んでいなかったから、てっきり彼が物語の主人公で、僕は『キャプテン・アメリカ』におけるバッキーみたいなサイドキックキャラクターだと思い込んでたんだ。撮影オーディションの場でも、僕はどっちかというと厄介者だったのに対して、彼は常にクールな存在だった。でも1ベッドルームのアパートメントで海の向こうに沈む夕日を眺めながら、事実を知った瞬間の衝撃は今でも忘れないよ。驚きすぎて言葉が出なかったんだ。だって手にした脚本の表紙には『ルーク・スターキラーの冒険』と書かれてたからね。(ほどなくしてルーカスはルークの姓を変更する)てっきり僕が勘違いしていて、実際にはハリソンがルーク役なんだと思ったくらいさ。でも脚本を読み進めていって、やっぱり自分がルーク役なんだと確信して、思わず「マジかよ」って口にしてた。自分ではそう捉えていたとしても、実際に自分が物語の主人公だとは夢にも思ってなかったんだ。ただ当初の僕の登場シーンはカットされてしまったんだけどね。ちなみに『ジェダイの帰還』における登場シーンもカットされてる。

Translated by Masaaki Yoshida

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