『ビルとテッドの大冒険』の主役、映画のおかげで性的虐待のトラウマを克服

『ビルとテッドの大冒険』の主演の一人、アレックス・ウィンター(左)はセットでの撮影に「本当に助けられた」と語った。(Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images) 

1989年、キアヌ・リーブスとともに映画『ビルとテッドの大冒険』で一躍スターの仲間入りしたアレックス・ウィンターは、英BBCラジオ5のインタビューで、自身が子どもの頃に受けた性的虐待のトラウマを同作のおかげで克服することができたと告白した。

現在は映画製作者として活躍するウィンターは、1989年の『ビルとテッドの大冒険』、1991年の続編『ビルとテッドの地獄旅行』の撮影に参加したことが、子どもの頃に受けた性的虐待の傷を癒してくれたと語った。

俳優から映画製作者へ転向したウィンターは、1989年の『ビルとテッドの大冒険』と1991年の続編『ビルとテッドの地獄旅行』の撮影のためにセットで作業したことが、子供の頃に受けた性的虐待の傷を押し退ける役に立ったと述べた。

「2作品とも本当に見たままで、とにかくマヌケなことばかり起きる内容だ。もちろん、芸術作品と呼べるものじゃないのは分かっている。でも、あの撮影は本当に楽しかったんだよ。精神的に本当に助けられた。環境も申し分ないくらい素晴らしかったね。ビルとテッドの世界はとても優しくて、あたたかみがあって、その場にいるだけで楽しかった」

ウィンターは「あそこでは童心に返って無邪気に気持ちよく過ごすことができた」と続け、2本の映画は「心を癒やす効果があった」と述べた。

ウィンターがこれらの作品で演じたのはリーダーとは名ばかりの頼りないビル役で、彼の相棒テッドを演じたのがキアヌ・リーブス。彼らが演じるかなりマヌケなティーンエイジャー2人が、奇妙なミッションを達成しようとする過程で巻き起こる騒動や災難を描いた作品である(1本目ではタイムマシンを使って最高の歴史レポートを作って発表しようとする。2本目では自分たちのクローンを抹消しないといけない状況に陥る)。

ウィンターは、これまで自分が受けた虐待について話したことは一度もないと言う。その理由は「潜在的に危険をはらんだ秘密」とみなしていたから、と。さらに、虐待の後遺症を克服することはウィンターにとって「地獄の苦しみ」だったとも述べている。

「虐待経験者はみんな、こういう告白をしても自分の声が他人に伝わる確信を持てなかったと思う、つい最近までね」とウィンター。「僕自身も、最も傷が深くて潜在的に危険をはらんだこの秘密を、ずっと隠している場所から安心して取り出せる場所は一つもないと思っていたんだ」

ウィンターが「今だ!」と閃いたのは2017年10月。ハーヴェイ・ワインスタインが過去何十年にも渡る常習的なセクハラと性的虐待で訴えられ、集中砲火を浴びたときだった。メディアに実名で登場して被害を申し立てた数多くの被害者を見て、彼も自分の過去の傷と向き合う勇気を得たという。しかし、彼は虐待があったことを認めるだけでは何も変わらないとも言う。

「この問題は一晩で解決できるような簡単なものじゃない。だって、率直に言うと、これは人間性の根幹に関わることだし、人類が地球上に誕生したときから続いている問題だから。今後それ相当の時間もかかるだろうし、メンタルヘルスの向上も必要だし、虐待という不快な真実にしっかり耳を向けられるだけの余裕が社会にも必要になるだろう。そう考えると、大きく変わるまで時間がかかるのは確実だね」



Translated by Miki Nakayama

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