14年間沈黙していたア・パーフェクト・サークルのメイナードが胸中を激白

ーあなたのプレスリリースにはこう記されていました。「『イート・ザ・エレファント』というタイトルが示唆するように、ア・パーフェクト・サークルの新作には、議論を呼ぶであろうキーナンの政治的見解がはっきりと現れている」

キーナン あんたはその部分に注目したってのかい? あれは『American Wino』の著者、ダン・ダンが書いたんだ。俺はヤツにこう言った。「バイオグラフィーなんて退屈だから、こう書いといてくれ。『自らを長年にわたって冷凍保存していたビリーがついに目覚めた』」って。2004年から2018年の間に生じたギャップに目を丸くする感覚としては、的を射た表現だろ? ヤツは俺の案に乗ってくれたよ、いい出来だろ?(笑)

作品が特定の時代に結びつけられてしまわないよう、俺はタイムリーなトピックは避けるようにしている。今は象徴的な出来事が次々に起きているから、そういうテーマに触れることがある種のスタンダードになっていることは理解しているがね。14年間の眠りから目覚めた人間が現在の世の中を見たら、一体どう反応すると思う? 「なんで誰もが妙な仮面をつけてるんだ? 頭がイカれちまったのか? みんな『Whoville』のキャラクターみたいじゃないか。誰かを陥れようとしているわけでもなさそうだし、気取ったり若作りしているわけでもなさそうだ。人類はどうかしちまったのか?」。俺の心境を説明するとしたら、きっとそんな感じさ。

ー虚栄心と自分本位というトピックに関連するのですが、ア・パーフェクト・サークルのコンサートに来ていた60人前後のファンが、写真を撮影していたことを理由に強制退場させられたことが、インターネット上で大きな話題に……。

キーナン (筆者の発言を制して)ヤツらが退場させられたのは写真を撮ってたからじゃない。ヤツらはショーを無断で録音していて、それが周囲の観客の迷惑になっていたからだ。

ー14年の眠りから目覚めた人間が、ドナルド・トランプが大統領になったことを知ってどう反応すると思いますか?

キーナン 当時の人間からしてみれば、コリー・フェルドマンが大統領になるのと同じくらいの衝撃だろうな。「一体何言ってんだ? テッド・ニュージェントが州知事に立候補? 冗談だろ?」

ー「バイ・アンド・ダウン・ザ・リヴァー」のヴォーカルも非常に特徴的です。インディアン的な訛りを滲ませたあのパフォーマンスについて、少し話していただけますか?

キーナン あれは俺がここしばらく追求しているスタイルだ。何がきっかけだったかは覚えてないけど、たぶん移動中によく聴いていたワールド・ミュージックの影響だろうな。ピーター・ガブリエルが『最後の誘惑』のサウンドトラックとして作った、『パッション』に起用されてたミュージシャンたちの音楽をよく聴いてたんだ。あの映画が公開される前から、俺はああいう音楽をよく聴いていたから、彼がそういうミュージシャンたちと作ったあの作品は好きだったよ。その影響はあったかもしれないな。



ー影響という点では、「ソー・ロング、アンド・サンクス・フォー・オール・ザ・フィッシュ」では、モハメド・アリ、キャリー・フィッシャー、デヴィッド・ボウイの死について触れていますね。一連の訃報に、やはり感じるところがあったのでしょうか?

キーナン 多くの有名人の死があんなにも続いたことに、多くの人々が衝撃を受けたと思う。もちろん過去にもそういうことはあったんだろうが、ソーシャルメディアが普及した現在では、誰もが知ってる有名人の死というニュースが及ぼす衝撃、そして広がる速度は大違いだ。53歳という年齢を迎えて、俺もそういうことを意識しないわけにはいかなくなってきたからな。

ー彼らの死はあなたにとってもショッキングな出来事だったと。

キーナン 俺の何かを揺るがすほどってわけじゃない。人の生涯は一時的だからこそ価値がある、俺はそう考えるようにしているからな。与えられたわずかな時間の間に、人はやるべきことをやらなければならない。有名人がこの世を去ったというニュースは、残された人々にそのことを思い出させてくれる。

Translated by Masaaki Yoshida

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