ストリーミング時代に逆行する「ロック界、最後の重鎮」

トゥールの楽曲カタログを正直に評価すると、バンドとしてのピークはもう過ぎたという意見もあるだろう。無秩序に広がった『10,000デイズ』は所々に驚異的な部分はあれど、彼らの作品の中でも最も不安定なアルバムと言える。

以上のことをすべて踏まえて、これだけ待たされているにもかかわらず、どうして私たちは相変わらず待っているのか? その答えは、きっと彼ら以外に彼らの空席を埋めるバンドがいないからだろう。現在活動中のバンドにトゥールのようなサウンドのバンドがいないだけではない。活動中のバンドが束になっても、サウンド面もコンセプト面も、トゥールの足元にも及ばないのだ。

今のビッグ・ロックの世界ですっかり欠如している性質が、トゥールのようなエキセントリックさとミステリアスさだ。メタリカは今でもパワフルなレコードを作り続けている。U2は今でも痛い所に手が届く。フー・ファイターズは相変わらずフー・ファイターズだ。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジはオフビートなニッチに上手くはまる巨匠と言える。しかし、彼らですら、そして2018年に活動しているどのバンドも、リスナーの頭をグルグルにかき回して、彼らの第3の目を見開かせたままで凝視させるような音楽を持っていないのだ。

Translated by Miki Nakayama

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