ミーゴス1万字インタビュー:ヒップホップ界のキングが語る過去・現在・未来

写真左からオフセット、テイクオフ、クエヴォ (Photo by Theo Wenner for Rolling Stone)

特大ヒットシングル、40万ドルの愛車、ストリップクラブ、マリファナ、カーディ・B――新作『カルチャーⅡ』を完成させたばかりの3人による赤裸々な発言の数々、そして頂点を見据える2018年の展望

現在のヒップホップ界を象徴するスターの1人が所有する、ゲートに囲まれた2エーカー以上の敷地に建てられたアトランタの豪邸の前には、2台のベントレーが駐められている。正面玄関の扉を開けるやいなや、視界がマリファナの煙で曇った。いまだ大半が未使用となっているこの豪邸は、ミーゴスのオフセットの自宅だ。がらんどうの部屋の幾つかでは、床に衣服が投げ出されている。一度も足を踏み入れていないと思われる部屋もあり、家具の中には値札がついたままになっているものもある。「散財しまくってるんだよ」オフセットはそう話す。「ずっとツアーに出ずっぱりで、ここにはほとんどいないんだけどな」

昨年ミーゴスの「バッド・アンド・ブージー」がチャートを席巻したことを考えれば、高額の請求に対して新札の束をポンと手渡す彼の姿は容易に想像できる。それを裏付けるかのように、バーカウンターの上には約10万ドルはあると思われる100ドル札の束が、こともなげに積まれていた。オーデマ・ピゲとパテック・フィリップの時計を含む、キッチンのカウンターの上に放置された宝石類の総額は、約127万ドル相当だという。「ラッパーたちのリリックに出てくる腕時計を、俺は実際に所有してるってわけさ」オフセットはそう話す。彼はすでに、子供の頃に夢見た以上の財産を手にしていた。「正直ここまで成功するとは思ってなかったよ」彼はそう話す。


2017年12月6日、アトランタで撮影(Photo by Theo Wenner for Rolling Stone)


今やミーゴス(本人たちはザ・ミーゴスと名乗っている)の名前を知らないものはいない。26歳のオフセット、その従兄弟で同じく26歳のクエヴォ、そしてクエヴォの甥にあたる23歳のテイクオフの3人は、もはやヒップホップという枠を越えた、独自のカルチャーの創造主となった。大胆でスリムな服装に身を包み、常に6、7個の輝くダイヤモンドのネックレスを首から下げた彼らは、ファッションアイコンとしても崇められている。彼らが定着させたDabは、今やキャム・ニュートン(NFLのアメフト選手)から中年のオヤジまでが見せるようになった。自身のテレビシリーズ『アトランタ』にミーゴスを登場させたドナルド・グローヴァーは、「バッド・アンド・ブージー」を「史上最高の曲」と評した。



あらゆるジャンルにおいて、過去数年間でミーゴスほどの影響力を誇ったアーティストはいないだろう。3拍子に短い単語を詰め込むライムスタイルは、まさに彼ら独自のものだ。カニエやドレイクもミーゴスのフロウを取り入れ、多くのMCが彼らのスタイルに倣った(テイクオフによると3拍子を用いたライムは、90年代にボーン・サグスン・ハーモニーとスリー・6・マフィアによって確立されたのだという。それでも、ミーゴスのスマートでアクロバティックなスタイルが斬新であることは確かだ)。オールドスクールなヒップホップ愛好家たちは、彼らのサウンドを機械的で使い古されていると批判するが、そういう人々は自宅の庭に足を踏み入れた近所の子供にがなり散らす老人と大差ない。

Translated by Masaaki Yoshida

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