マドンナ、20年前の先駆的名盤『レイ・オブ・ライト』:制作者が語る6つの秘話

1998年の作品『レイ・オブ・ライト』 (Photo by Frank Micelotta/Getty Images)


2. 『レイ・オブ・ライト』は大まかに言うと「魂の変身」をテーマにしているが、1曲だけ例外的にドラッグの危険性を扱っている。


「キャンディ・パフューム・ガール」は、オービットとスザンナ・メルヴォインが行った2週間の曲作りとレコーディングの期間に生まれた曲だ。スザンナはロサンゼルスのトップ・セッションマン、マイク・メルヴォインの娘。スマッシング・パンプキンズのキーボディスト、故ジョナサン・メルヴォインが兄弟で、双子の姉妹がプリンス&ザ・レボリューションズのギタリストでプリンスの婚約者だったウェンディ・メルヴォインだ。スザンナ自身も活発に活動している。ザ・タイムの派生グループでプリンスのサイド・プロジェクト、ザ・ファミリーのメンバーとして「ナッシング・コンペアーズ・トゥ・ユー」のオリジナル・バージョンを歌っている。また、プリンスの楽曲の中で最も甘美な「サイン・オブ・ザ・タイムス」「スターフィッシュ・アンド・コーヒー」をプリンスと共作している。スザンナによると、ウィリアム・オービットから彼女に何曲分かのメロディと歌詞を書き、歌を歌う依頼があったという。ここで作った曲は彼女のソロ・デビュー・アルバムか、オービットのストレンジ・カーゴのアルバムに収録される予定だった。しかし、彼女も気に入っていた曲をマドンナも気に入ってしまったのである。

「オービットのスタジオの床に座って歌詞を書いていた時に『キャンディ・パフューム・ガール』が浮かんできた」と、スザンナが当時を思い起こす。「私にとっては個人的な曲だった。当時の私はジョナサンの死を悲しんでいたし、彼の死はドラッグの悪魔的な魅力でもたらされた死だったから(ジョナサンは1996年にヘロインの過剰摂取で他界)。このレコーディング・プロジェクトには本当に助けられたわ。オービットのスタジオで作った曲はこれ以外に2〜3曲あったの」

しかし、彼女とオービットが作った曲をオービットがマドンナに提供したという連絡がスザンナの音楽出版社から入った。マドンナのレコードに「キャンディ・パフューム・ガール」が収録されることになり、彼女が版権の3分の1を求めていると言われた。また、スザンナは『レイ・オブ・ライト』収録の「スウィム」の歌詞も自分が書いたと主張している。「変更が加えられているけど、大きな違いはない」と。さらにオリジナル・メロディもスザンナの手によるものだが、マドンナによって「上手く改良されている」と彼女自身も認めている。とはいえ、この時スザンナはソングライターとしてクレジットもされず、報酬も得ていない。しかし彼女はマドンナに対して不満はないと強調する。マドンナが「キャンディ・パフューム・ガール」の意味を十分に理解していて、本当に素晴らしいレコードを作ったと感じている、と。「とはいえ、『レイ・オブ・ライト』で正当なクレジットをもらえていたら、その後の経済的な苦労はなかったと思う」と明言した。

3. アルバムを特徴づけるテクノ・ロックのタイトル・トラックは古いフォーク曲が基になっている。

オービットがメルヴォインと共作した楽曲を提供する時、彼はストレンジ・カーゴのボーカリストで曲作りも行っているイギリス人シンガーのクリスティン・リーチとの未発表曲も、テープに入れてマドンナに送った。リーチの叔父はデヴィッド・アトキンスだが、デイヴ・カーティスという名前でカーティス・マルドゥーンというフォークデュオの片割れとして、70年代初頭にディープ・パープルのレーベルからアルバム2枚リリースしている。2枚とも成功しなかったが、その1枚に「Sepheryn」という曲が収録されていた。リーチはオービットからもらったインスト・トラックに合わせて「Sepheryn」を少し変えながら歌ったところ、これを聞いたオービットはリーチが作ったものと思い込んだのである。この曲にマドンナがさらに手を加えて、最終的に「レイ・オブ・ライト」という楽曲となった。この曲のクレジットには、マドンナ、ウィリアム・オービット、クライヴ・マルドゥーン、デイヴ・カーティス、クリスティン・リーチが記されている。

「レイ・オブ・ライト」には「Sepheryn」に酷似している箇所が幾つかある。まず、出だしのメロディは基本的に同じだ。歌詞が若干ズレている程度である。とはいえ、「レイ・オブ・ライト」には「Sepheryn」のテンポ・チェンジは入っておらず、一定のリズムをキープしている。オンラインに流出したリーチの音源を聞くと、これらの変化は最初にリーチが歌ったバージョンにすでにあったものだ。女神的な歌詞という重要な要素を加えているマドンナの解釈は、カーティス・マルドゥーンのオリジナルよりもリーチのバージョンに近いのだが、マドンナのメロディの構成は聞く者の耳を奪い続ける独自のもので、これはリーチには不可能な要素である。マドンナとオービットは、音楽的な変化を求めた切実な実験を、過激なペルソナと魂の成長というアルバム全体のテーマを支える土台へと作り変えることに成功したのだった。



Translated by Miki Nakayama

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