ニルヴァーナの91年伝説のライブを振り返る:ディーヴォの無名曲をカバー

(Photo by Frans Schellekens/Redferns)

1991年にシアトルで行われた伝説のライブでディーヴォのシングル「ウィップ・イット」のB面「ターン・アラウンド」をカバーしたニルヴァーナを振り返る。

1990年代初頭、ディーヴォを敬愛する人は少なかった。ニュー・ウェーヴの先駆的ユニットであるディーヴォは、1988年のアルバム『トータル・ディーヴォ』がチャートで189位になった時、遂にロックの底辺まで浮上したと感じたことだろう。しかし、そんな好機も1990年の『ディーヴォのくいしん坊・万歳』(原題:Smooth Noodle Maps)が酷評されて終わりを告げる。このアルバムには悲しげな曲「DEVOだって人間なんだ」(原題:Devo Has Feelings Too)が収録さているが、チャートに入ることすらなかった。彼らはクラブ・ツアーを敢行してアルバムの売り上げを伸ばそうとしたが、何をやっても希望がないと判断して、結局1991年3月に解散となった。

それからちょうど1か月後、ニルヴァーナはシアトルのオーケー・ホテルでライブを行った。このライブは、彼らが新曲「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」を初披露したために、後に伝説のロック・ライブと呼ばれることになる。この夜、ライブの前半でカート・コバーンがディーヴォの曲をプレイするとMCした時の観客の拍手はまばらだったが、彼らは勢い良く「ターン・アラウンド」を演奏し始めた。この曲はディーヴォにとっては大ブレーク曲と呼べる1980年の「ウィップ・イット」のB面だ。ニルヴァーナがこの曲を最初に演奏したのは、その前年の10月で、ワシントン州オリンピアにあるノース・ショア・サーフ・クラブでのライブだった。そして、同月後半のロンドンのライブでもう一度演奏した。このライブの一部はジョン・ピールのラジオ番組で放送された。

オーケー・ホテルのライブでは、この曲を知っている観客はほとんどいないようだった。しかしコバーンは10代の頃に大好きだったディーヴォに敬意を表しながら楽しそうに演奏したのである。「アンダーグラウンドからスタートしてメインストリームまで上り詰めたバンドはたくさんいるけど、中でもディーヴォが一番苦労を強いられた破壊分子だ」と、1992年にコバーンが言っている。「ディーヴォはとにかく最高だ。大好きなんだよ」と。ニルヴァーナは「ターンアラウンド」とタイトルを若干変えて、1992年のコンピレーションLP『インセスティサイド』にこのカバー曲を収録した。

Translated by Miki Nakayama

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