米音楽業界の重鎮リオ・コーエンによるSXSWスピーチ6つのポイント

4. 長期的な成功を望むならば、自分ではなくアーティストを優先しなくてはならない

デフ・ジャムは90年代にポリグラムと合併したが、その直前に会社が消滅の危機を迎えていた頃、コーエンは自身のキャリアにおけるどん底を経験したと話す。ウォーレン・Gの『レギュレイト』のヒットをきっかけに、レーベルの経営状態が再び上向き始めた頃には、メジャーレーベルもヒップホップに興味を示すようになっていた。その一方でコーエンは、ショーン・コムズやシュグ・ナイトのような、自分自身が脚光を浴びようとするレーベルオーナーたちについては懸念を示していた。「デフ・ジャムは音楽ビジネスにおけるAamcoのような存在であろうとしていた」コーエンはそう話す。「我々はあくまで裏方であり、脚光を浴びるべきなのはアーティストだ」

5. インターネットは音楽業界に公平さをもたらすと同時に、新たな課題を生み出した

デフ・ジャムからワーナーに移ったコーエンは、2006年にメジャーレーベルの代表として初めて、Youtubeとミュージックビデオのライセンス契約を交わした。彼はインターネットがリスナーを中心とする考え方を生んだだけでなく、音楽業界に公平さをもたらしたと語る。「それまでの音楽業界のシステムは、とにかく金がかかり過ぎていた」音楽ソフトの生産、プロモーション、流通という従来の仕組みについて彼はそう話す。小さなレーベルにとっては、思いがけないヒットが命取りとなる場合もあったという。しかしストリーミングが主流となった現在は、従来とは異なるコストが発生しているのも事実だ。彼はこう話している。「巨大な倉庫と無数のラベルを手放した代わりに、今日ではグローバルなネットワークの構築が求められる」

6. 音楽業界の未来はかつてなく明るい

コーエンは新レーベル300 Entertainmentを設立し、自身の前線復帰を宣言するとともに、クリス・ブラックウェルやアーメット・アーティガンといった業界のライバルに宣戦布告してみせた。しかしAppleとspotifyの2大勢力が台頭する現在において、コーエンはユーチューブ独自のポジションを築くという使命も背負っている。両社が製品の販売によって成り立っているのに対し、Snapchatのような企業はサービスを提供しているとした上で、コーエンはYoutubeがその両方の性質を備えていると主張する。「これからの音楽業界は広告とサブスクリプションによって成長していく。我々は優れた音楽を提供することで、有料会員の増加に貢献していく」彼は力強くそう話した。「パーティの開始には間に合わなかったが、心配は無用だ」

Translated by Masaaki Yoshida

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