ニール・ヤング、新作映画や自身の配信サイトについて語る:引退ツアーは「くだらない」

ー今年もプロミス・オブ・ザ・リアルと一緒にプレイしますよね?

ああ。(カリフォルニア州パサデナでのフェスティバル)Arroyo Seco Weekendに参加する。カナダのケベックにも行くし、ファーム・エイドにも出る。今のところ決まっているのはそれくらいだ。ライブハウスやスタジアムでのツアーは今のところ考えていない。来年やるかもしれないけどな。今年はアーカイヴの仕事で忙しいんだよ。それに本も執筆していて、書きかけの小説がもうすぐ完成ってところに来ているんだ。

ーそれはどんな小説ですか?

『カナリア』I(原題:Canary)という小説だ。ニューヨークの出版エージェントとこの本の作業をしている。もうすぐ完成するよ。ある種SF小説で、ある罪で逮捕された男の話だ。この男は電力会社に勤めていて、社内の汚職を暴露したいと思っている。そこで、そいつは暴露の方法を見つけて、送電系統を2回遮断する。そのせいで彼は逮捕されることになり、警官がオフィスにやってきて連行されるんだ。バンに乗せられた彼は薬を打たれて、とある病院に連れて行かれる。目覚めた彼は社会に対する借りを返すという使命に燃える。この男の頭にはそれしかない。そのあと、この男はあるメガネをかけることになり、このメガネを通してこの男が見るものすべてが放送されるようになる。彼は様々な場所に行き、そこにいる人々と交流するんだ。この男は普通の人間だが、ダウンタウンのとある場所にいる連中は、彼の一挙手一投足を監視しているのさ。彼は自分が勤めていた太陽光発電会社が詐欺と気付く。彼らは太陽光など使っていない。使っているのは特別な糞尿で、この会社を作ったやつが悪質の燃料や悪質の電力などの最悪なものを作る方法を生み出した。そして、この電力の燃料となる糞尿を排出する動物を遺伝子操作して作る方法も見つけ、新たな種族を作り上げてしまう。それがとんでもない事態を引き起こすという長い物語だから、小説にしたんだよ。

「俺が引退したら、みんなすぐにわかるさ。だって俺はこの世にいないから」

ー最近、引退ツアーを発表するアーティストが多いですよね

俺もシェールと一緒にやるよ。シェールと俺は引退ツアーを行うんだ(笑)。「ニール&シェール」ってタイトルでね。まあ、俺が引退したら、みんなすぐにわかるさ。だって俺はこの世にいないから。みんな「ニールはもう戻ってこないから引退したな」ってわかるはずだ。でも、俺は「戻ってくるよ」と言うつもりはない。そんなアホな話あるか? プレイしたいと思ったら、いつでもプレイするよ。今はそう思わないだけだ。俺には最高のバンドがいる。2つもある。プロミス・オブ・ザ・リアルとクレイジー・ホースというのがな。両方とも素晴らしいバンドで、それぞれが違う。でも演奏はどちらも引けを取らないほど良い。プロミス・オブ・ザ・リアルは俺がプレイする音楽ならほぼ何でも演奏できるし、本当に上手いし、エネルギーも何もかも持っている。メンバー全員が雰囲気を作り出せるし、彼らとのステージに不安を感じることは一瞬たりともないね。

最近、クレイジー・ホースへの扉は閉ざしていないとサイトに書いていましたよね?
ああ、驚異的なアルバムを完成させたよ。それが一番新しい『Alchemy(原題)』だ。それに、2001年のアルバム『Toast(原題)』もある。初期の頃だと1969〜70年のアルバムがあって、収録されている楽曲を聞いた人はほぼいない。そんな感じだから、ライブをやろうと思えば演奏する曲はいくらでもあるんだよ。ただ、今はツアーをする気分じゃない。俺の中に面白い感覚があって、それが「今じゃない」って言っているのさ。準備ができたら「行け」と教えてくれるはずだ。まあ、その感覚はミューズからのお告げのようなもので、俺のミュースが今は休めって言っているから、それに従うだけだよ。

ー1973年のロキシーでの録音に話を戻しますが、あのときの自分と今の自分の違いは何ですか?

全く違う男だね。俺自身、自分とは思えないくらいだ。君と俺があの頃の俺とおしゃべりできるなら、違いを見つけられるだろうがね。でも、それは無理な話だろう? レコードを聴いて違いを見つけて欲しい。当時の映像が少ないのが残念だけど。

ー過去の自分と話ができたら、どんなことを伝えますか?

「お前はよくやっている。お前の音楽が気に入っているよ」って言うかな。

ーアルバム『今宵この夜』の頃はテキーラを浴びるほど飲んでいたようですが。

あの頃は馬鹿だった。今じゃ絶対にしない。

ー今でもやめられない悪習はありますか?

ないよ。葉っぱだけさ。ニールおじさんの畑で育った葉っぱだ。良質だよ。

ー葉っぱが創造性を刺激するのですか?

良いとか、増すとか、わからないけど、違うのだけは確かだ。吸い始めると書き続けたくなるし、それがいいんだよ。自分の創造性を刺激するものは何でもいいと思うね。集中力も増す。時にはミスを犯すこともあるだろうが、そんなことは問題じゃない。後で直せばいいだけだからな。俺はミスを直すのをやめないよ。とにかく進むだけさ。完成したら、一度見直してみて、もっと良いものに改良する。ただ、考え込むのはダメだ。自分の中から自然に出てきたものがいいんだよ。

ー何年もかけて1枚のアルバムを作る人が多いですが。

最悪だ。それは俺のやリ方じゃない。

ーロキシーでのライブの前に行った、アルバム『Time Fades Away(原題)』での巨大なツアーは、音楽の暗さゆえに、観客が理解するのに苦労したことで伝説となっています。

ああ、全部過去のことだよ。昔の話だ。ロキシーは面白かったよ。今宵この夜ツアーは、ツアーの最中に連中が葬り去ろうとした。『ハーヴィスト』を出したばかりだったから。本当のところは、『ハーヴェスト』のあとにアルバムを1枚作って、そのあとに『今宵この夜』を作った。『Time Fades Away(原題)』は『ハーヴィスト』と比べて、唯一成功しなかったアルバムさ。みんな、俺がジョン・デンバーみたいになるのを願っていたけど、そうはならなかった。実際、ジョン・デンバーは素晴らしいと思う。ただ、俺たちのやり方には大きな違いがあって、俺は俺のやり方でやりたいだけなんだよ。

Translated by Miki Nakayama

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