アジカン後藤正文が初の主宰アワードを総括「この賞はカウンターでありたい」

「アップルビネガーミュージックアワード」主宰者であるASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が「アップルビネガーミュージックアワード」なる音楽新人賞を設立すると発表したのは2018年1月初旬のこと。

「2017年に発売されたアルバム、ミニアルバムが対象」「ファースト・アルバムでなくてよい」「新人でなくてよい」という条件のもと10作品が後藤により選出され、ミュージシャンでありプロデュースも行う片寄明人と日高央、そしてチャットモンチーの福岡晃子の4人で審議をし、このたびJJJ『HIKARI』が受賞に至った。
現在発売中の雑誌「Rolling Stone Japan vol.02」に掲載された後藤のインタビューをここではお届けする。

「いいと思った“作品”を賞賛できる流れがないとしんどいなとは思っていた」

ー初のアワード審査を終えてみていかがですか?

後藤:何より単純に、やっぱり人の作品を評価するのって本当に難しいとあらためて思いました。的を射た意見には「なるほど」と思うかもだけど、褒めていても的外れな場合があるだろうし、評価される側は「何を偉そうに」って思うかもしれない。そういう戸惑いを審査員みんなで抱えながらも何とか飛び越えて、やってみたという感じですね。


『HIKARI』

JJJ
FL$Nation / AWDR/LR2

候補作一覧は以下URLでチェック
http://www.applevinegaraward.com/


ー賞を作るにあたり、作品がフェアに評価をされる環境や、奨励の海外事例など、何かインスピレーションを受けたものがあったのですか?

後藤:特には無いんです。しかもこのアップルビネガーミュージックアワードがフェアかといえば、僕の趣味で10作品のノミネートを選んだという時点で全くフェアじゃない(笑)。賞を“フェアにやる”こと自体が無理な気もするし。でも、いいと思った“作品”を賞賛できる流れがないとしんどいなとは思っていました。「録音がいい」「サウンドプロダクションがいい」といった部分は、現状のアワードでは全くテーマになっていない気がするので。サウンドについては、ミュージシャンじゃないと分からない部分があると思っています。だからリスナーが選ぶ賞ももちろんあるけど、ミュージシャンがミュージシャンを評価する賞があってもいいのかなと。

ーそんな中でも「新人賞」としてみた理由は?

後藤:新人って、これから爆発する可能性を秘めているし話題のデビュー作品を作るという目的もあって、既に賞としても幾つかありますよね。そういう賞ではなくて、もう少し幅を広げて、中堅まで含めていい作品を評価しましょう、という流れを音楽にも作りたかった。例えば文芸の賞を見渡してみると、芥川賞や三島由紀夫賞などはいわゆる“デビュー作”でなくても新人として受賞できる。基本的には新しいミュージシャンを見つけるのが新人賞だけれど、いろんな形があっていいんじゃないかな、と。残念ながら今の日本では「商業的な成功=音楽的な成功」とは言えない状況なのもあって……。リスナーはどうあれ、多くの音楽家たちは、売れているものが必ず優れているとは考えていないと思います。あとは本当に「何をもって新人とするのか」という課題は、審査で悩んだ部分ではありましたけど。初回ですし、僕より若い人だったらいいかなという緩やかな基準もありつつ(笑)。

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